2017年11月10日

第3回ロシア法研究会が開催されました。

第3回の研究会は、名古屋大学大学院法学研究科の佐藤史人教授(ロシア法)をお招きして、ロシア連邦の裁判制度(Судебная Система Российской Федерации)をテーマに行われました。

 

1.ロシア連邦憲法(Конституция Российской Федерации)

【ロシア連邦憲法】
Статья 5
1. Российская Федерация состоит из республик, краев, областей, городов федерального значения, автономной области, автономных округов — равноправных субъектов Российской Федерации.
第5条
ロシア連邦は、共和国・地方・州・連邦重要都市・自治州・自治管区から構成され、ロシア連邦構成主体として平等の権限を有する。

Статья 66
1. Статус республики определяется Конституцией Российской Федерации и конституцией республики.
2. Статус края, области, города федерального значения, автономной области, автономного округа определяется Конституцией Российской Федерации и уставом края, области, города федерального значения, автономной области, автономного округа, принимаемым законодательным (представительным) органом соответствующего субъекта Российской Федерации.
第66条
1.共和国の地位は、ロシア連邦憲法と共和国憲法によって決定される。
2.地方・州・連邦重要都市・自治州・自治管区の地位は、ロシア連邦憲法と地方・州・連邦重要都市・自治州・自治管区の憲章によって定めらなければならず、これらは、当該連邦構成主体の立法者(代表者)により採用されなければならない。

 

2.連邦構成主体(Субъект Федерации)と管轄権限(ведение)

 ロシア連邦は、上記の第5条、第66条、その他条項に基づき、現在、連邦構成主体(Субъект Федерации)を合計85カ所設置しており、その内訳は、州(Область)が46、地方(край)が9、都市(город)が3、共和国(Республика)が22、自治州(Автономная область)が1、自治管区(Автономный округ)が4、となっています。
※以上は、いわゆるクリミア併合後のロシア国の主張を含みます。

 その上で、ロシア連邦憲法は、中央政府と地方政府の管轄権限の関係について、下記のように連邦管轄事項(第71条)と共同管轄事項(第72条)を規定しています。前者は連邦法令が専属的に適用されるのに対し、後者は、連邦及び連邦構成主体が共同の管轄権限を有することを定めますが、両者が抵触した場合は、連邦法令が優先されることになります。

Статья 71
В ведении Российской Федерации находятся:
а) принятие и изменение Конституции Российской Федерации и федеральных законов, контроль за их соблюдением;
б) федеративное устройство и территория Российской Федерации;
(中略)
о) судоустройство; прокуратура; уголовное и уголовно-исполнительное законодательство; амнистия и помилование; гражданское законодательство; процессуальное законодательство; правовое регулирование интеллектуальной собственности;
第71条
ロシア連邦の管轄には、以下の事項が属する。
a) ロシア連邦憲法および連邦法の制定・改正、その遵守の監督。
б)  ロシア連邦の連邦構造および領土。
(中略)
o) 裁判制度、検察制度、刑事法および行刑法、大赦および特赦、民事法、知的財産の法的規制

Статья 72
1. В совместном ведении Российской Федерации и субъектов Российской Федерации находятся:
(中略)
к) административное, административно-процессуальное, трудовое, семейное, жилищное, земельное, водное, лесное законодательство, законодательство о недрах, об охране окружающей среды;
л) кадры судебных и правоохранительных органов; адвокатура, нотариат;
第72条
1.ロシア連邦とロシア連邦構成主体の共同管轄には、以下の事項が属する。
(中略)

k) 行政法、行政訴訟法、労働法、家族法、住宅法、土地法、水法、森林法、天然資源法、環境保護法
л)  裁判機関および法秩序維持機関の人事、弁護士制度、公証人制度

 

3.連邦構成主体の裁判制度(Суд Субъекта Российской Федерации)

 さて、中央政府であるロシア連邦は、前記の連邦管轄事項(第71条o))に基づき、ロシア連邦と各連邦構成主体の裁判制度を定めています。

 現在、1つの連邦構成主体には、基本的に1つ以上の連邦構成主体裁判所(Суд Субъекта Российской Федерации)を設置することを原則としていますが、ロシア国の裁判構成は日本国(地方裁判所⇒高等裁判所⇒最高裁判所)のようにシンプルではありません。例えば、同一の裁判所が、案件の種類によって第1審裁判を管轄したり、あるいは、控訴審や破棄審を管轄することが制度上予定されています。これを州裁判所で言えば、一般的に、①商事裁判所(Арбитражный Суд)と②通常裁判所(Суд Общей Юрисдикции)が設置され、①前者では商事事件の第1審の審級を管轄するのに対し、②後者の通常の民事・刑事事件では第2審(控訴審)と第3審(第1破棄審)の両方の審級を管轄することが多くなっています。

※ロシア連邦法における「Арбитражный」の原語の翻訳には議論がありますが、本ウェブサイトでは、「仲裁」ではなく「商事」と和訳することとしました。

 また、ロシア連邦では、2014年8月に商事手続法を大改正し、従来、上記①の商事裁判の最高司法機関であった最高経済裁判所(Высший Арбитражный Суд Российской Федерации)を廃止し、上記②の最高裁判所(Верховный Суд Российской Федерации)にすべて統合その他の改正を行いました。加えて、現在、民事手続法の改正や裁判官の独立についても活発に改正が議論される状況にあります。

 その他、ロシア連邦には、治安判事(Мировой Судья)という制度や、近時の改正で導入された知的財産権(Интеллектуальные Права)を専属的に取り扱う裁判所幹部会(Президиум Суда)もあって、相応に複雑な構成となっています。以下、まずは、商事裁判(上記①)について検討してみましょう。

 

4.商事裁判(Арбитражный Суд)について

 商事裁判所は、民事・行政事件のうち、経済紛争および企業活動・経済活動に関する事件を審理します。会社間どうしの紛争や、個人であっても個人事業者として登記されている者もこれに含まれます。

①連邦構成主体の裁判所(第1審)
 商事事件は、一般的に、各連邦構成主体の裁判所(州裁判所、地方裁判所、市裁判所等)を第1審の審級裁判所として審理を開始します。例えば、モスクワ市であれば、モスクワ都市裁判所を第1審裁判所として訴状を提出することになります。第1審裁判は、訴状が受理された後、3か月以内に審理されて判決されなければなりません(但し、裁判所所長の裁量により、もう3か月延長することができる)。第1審判決は判決日から1か月経過後に効力が発生します。

②商事控訴審裁判所(控訴審=Апелляционная Инстамнция)
 第1審判決に不服がある場合には、商事控訴審裁判所に控訴することになり、ロシア全国に21設置されています。第1審判決日から1か月以内に控訴しなければならず、控訴から2か月以内に審理され判決されなければならないとされます(但し、裁判所所長の裁量により、もう4か月延長することができる)。第1審とは異なり、控訴審判決は判決日に効力が発生します。1点、気を付けなければならないのは、控訴審裁判所は、第1審の事後審であるとされているため、控訴審で証拠を追加提出することは原則として認められません。したがって、第1審の段階で、必要となり得る証拠は予めすべて提出しておくことが推奨さます。

③管区商事裁判所(第1破棄審=Кассационная Инстамнция, Первая)
 商事事件の控訴審判決に不服がある場合には、さらに、同判決発行日から2か月以内に、各管区を管轄する管区商事裁判所を破棄審として上訴することになります。現在、この破棄審は、ロシア全国で10カ所設置されています。
 管区商事裁判所では、下級審による事実認定は争えず(だからこそ、「破棄審」と云われる所以もありますが)、下級審の認定した事実を前提として、法令の解釈適用が正しいかどうかが判断されます。上訴受理から2か月以内に審理して判決しなければならないことになっています(但し、裁判所所長の裁量により、もう4か月延長することができる)。

④最高裁判所裁判協議部(第2破棄審=Кассационная Инстамнция, Вторая)
 管区商事裁判所判決に不服がある場合には、さらに、最高裁判所に上訴することができます。具体的には最高裁裁判所協議部(Судебная Коллегия)で審理される。この第2破棄審とも云われる制度は、2014年8月の大改正で導入されたものであり、その主たる目的は、最高裁判所の負担(ないし、従前の最高経済裁判所で経験した負担)の軽減にあるとされます。
 第2破棄審で審理されるのは、「実態法・手続法の重大な法令違反」(Существенные Нарушение Судами Норм Материального и Процессуального Права)がある場合に限られるため、実務上は、第2破棄審で受理されるのは2%以下の模様です。

⑤最高裁判所幹部会(監督審=Надзорная Инстамнция)
 さらに、最高裁判所裁判協議会の判決に不服がある場合には、3か月以内に、最高裁判所幹部会(Президиум)を最終審として上訴できます。しかし、同幹部会で審理されるのは、「憲法の保障する権利・自由への侵害」「公の利益の侵害」等の極めて限定された事由に限られるため、実際上、審理される件数は年間でも僅か1桁に過ぎないとされます。
 以上からして、実務上は、第2破棄審(最高裁判所裁判協議体)と監督審(同幹部会)における各審理は、結論が変わることを期待することはほぼ期待できないでしょう。

⑥その他
 以上のほか、知的財産権に関する紛争は、当事者が法人・個人事業者であるか否かを問わず、連邦構成主体の裁判所の中にある知的財産裁判所を第1審として審理判決されます。知的財産権に関する第1審判決に対しては、通常の商事事件のような商事控訴審裁判所が存在せず、不服申立は、各管区商事裁判所内にある知的財産権幹部会に上訴することになります。その後の第2破棄審、監督審は通常の商事裁判と同様になります。
 また、消費者倒産事件・労働事件も、当事者が一個人であっても、商事裁判手続で審理される点に留意する必要があります。

 

5.検討と課題

 以上の商事裁判手続と審級制度に関しては、研究会参加者の間で、次のようなディスカッションが交わされました

ⓐ各審級の審理期間が極めて短く、しかも、実質的に第1審で証拠関係の提出が完結されるなら、実務を取り扱う代理人としては、極めて、迅速かつ切迫した訴訟スケジュールへの対応を余儀なくされるのではないか。

ⓑ外国企業からすると、訳文の作成や外国言語による打ち合わせ、本国決済等を行う負担が、相当に大きなボリュームになることが予測される。原告側ならともかく、被告側に立たされた場合、このマネジメントは容易ではなかろう。

ⓒ仮に商事裁判制度を利用するとしても、管轄が大都市以外の州、地方等にある場合には、所属裁判所裁判官がどの程度、当該地域の政治的・権威的影響から独立しているかいう点も、課題となりそうである。

ⓓ上記の審級構造からすると、実質上は、第2破棄審(最高裁経済協議部)と監督審(同幹部会)はカウントできないので、管区商事裁判所が事実上の最終審と理解して実務対応すべきであろう。

ⓔ現在、契約書上の裁判管轄の合意は外国企業に限って認めれる方向が示されているが、それがどの程度の法的効力を有するかは、今後の経験値の確保が必要となる。

ⓕ判決書も、主文のみで、理由らしい理由も記載されない場合が少なくない。迅速な審理・判決という点は評価できるが、判決理由が十分記載されない場合、上級審での主張・立証には困難が伴う。

ⓖ以上からすると、モスクワ等の大都市において、予め入念に証拠関係を準備して臨むならともかく、そうでない場合には、外国企業(=日本企業を含む)の場合は、裁判の他、商事仲裁の可能性も同時に追求できる体制も視野に入れた方が総合的には良かろう
(文責:小川)

 

※本ウェブサイトで公開される内容は、あくまでロシア法研究会で交わされた議論の概略を報告したに過ぎません。掲載内容の正確性や事実の真実性を保証するものではございませんので、ご理解いただきたくお願い申し上げます。

 

 

 

 

2017年12月13日

アレクサンドル・コノヴァロフ・ロシア連邦司法大臣が来日されました(2日目)。

2017年12月12日、ロシア連邦のアレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣が日本にお越しになられました。

既に2017年5月16日の記事でもご紹介させていただいておりますが、日露法律家協会(”当協会”)は、同日、ロシア連邦サンクトペテルブルク都市で開催された国際リーガルフォーラム後援の下、「グランドホテルヨーロッパ」内にて日露法律家協会の設立総会が開催され、川村明(日本側)議長とエレーナ・ボリセンコ(ロシア側)議長が共同署名することにより当協会の設立が承認宣言されました。

コノヴァロフ司法大臣には、この設立総会にお立ち合い頂きました。

今回は、「2017年12月12日②の記事」に引き続き、翌13日の模様についてご紹介させていただきます。

 

2017年12月13日午前9時30分、コノヴァロフ司法大臣は、ボリセンコ前司法副大臣、セルゲーエフ在京日本大使館総領事と共に、日本弁護士連合会(”日弁連”)を表敬訪問されました。

日弁連では、当協会日本側議長である川村明弁護士と事務局にて大臣のアテンドを行い、日弁連側からは、中本和洋会長が大臣表敬の応対をされました。コノヴァロフ司法大臣の方からは、今後、両国における若手法律家のインターンシップ交換や司法分野における相互協力の申入れがあり、中本会長からは、2020年に京都で開催予定の国連犯罪防止刑事司法会議(※)への協力要請がありました。
この他、民事・刑事を含めた司法分野での取り組みや活動内容について、それぞれの側から紹介と説明がありました。
※5年に一度開催される犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議であり、次回(2020年)は京都で開催される予定。

 

日弁連に表敬訪問された際、大変丁寧にご挨拶をされるコノヴァロフ司法大臣(中央)
日弁連中本和洋会長からコノヴァロフ司法大臣に記念品が贈呈されました。
最後にはご列席の皆様全員で記念撮影を行いました(写真中央がコノヴァロフ司法大臣、その右側から川村明議長、中本和洋会長、大臣左側からボリセンコ前司法副大臣、ルドミノ弁護士、通訳女史、セルゲーエフ在東京ロシア大使館総領事)。

 

法科大学院学長・大学院研究科長の皆様との意見交換会

日弁連表敬訪問の後、コノヴァロフ司法大臣とボリセンコ前司法副大臣は、日比谷公園内にある日比谷松本楼にご移動になられました。松本楼では、日本の法科大学院や大学院研究科の学長・研究科長の皆様とお会いされ、日露の大学・大学院における今後の学生・研究者の交換留学等について、約1時間にわたり意見交換を行いました。お忙しい中、ご参席くださいました大学関係者の皆様におかれましては、誠に有難うございました。つつしんで御礼申し上げます。

 

以上のとおり、2日目である12月13日も、午前中に、①日弁連訪問と②大学関係者の皆様との意見交換を行い、③午後1時の便で成田空港から帰途につかれる、という非常にハードなスケジュールとなりましたが、最後には、ロシア側より、「今回の来日(1泊2日)は、非常に大きな成果が得られました。」とのお言葉を頂いております。誠に有難うございました。

 

当協会としても、本年5月の創立後、初めて司法大臣の来日をアテンドさせて頂きました非常に歴史的な催事・活動であったと理解しております。

 

今後も、日露法律家間の交流と発展のために、微力ながらお手伝いをしていく所存です。(事務局の中野由紀子弁護士と長友隆典弁護士におかれましては大活躍でした。本当にお疲れ様でした。)

⇒前日の国際仲裁シンポジウム・第2回カウンシルミーティング・歓迎レセプションの様子は、「2017年12月12日の記事①」、「2017年12月12日の記事②」をご覧ください。

 

※今回の司法大臣の訪日は、1泊2日という大変お忙しいスケジュールではありましたが、当協会において、各ミーティングやロジ周りをアレンジさせて頂きました。法務省・外務省・在京ロシア大使館の皆さまの並々ならむご尽力とご協力に、心より感謝申し上げます。(文責:小川)

 

 

 

 

 

2017年12月12日②

アレクサンドル・コノヴァロフ・ロシア連邦司法大臣が来日されました。

2017年12月12日、ロシア連邦のアレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣が日本にお越しになられました。


既に2017年5月16日の記事でもご紹介させていただいておりますが、日露法律家協会(”当協会”)は、同日、ロシア連邦サンクトペテルブルク都市で開催された国際リーガルフォーラム後援の下、「グランドホテルヨーロッパ」内にて日露法律家協会の設立総会が開催され、川村明(日本側)議長とエレーナ・ボリセンコ(ロシア側)議長が共同署名することにより当協会の設立が承認宣言されました。

コノヴァロフ司法大臣には、この設立総会にお立ち合い頂きました。

今回は、「2017年12月12日①の記事」に引き続き、当協会の第2回目のカウンシル・ミーティングとその後の歓迎レセプションの模様をご紹介させていただきます。

第2回のカウンシル・ミーティングには、アンダーソン毛利友常法律事務所(赤坂Kタワー22階)にて、日本側から14名(オブーバを含む)、ロシア側から5名(ご来賓の大臣等を含む)がご参席されました。ロシア側からご参席頂きましたのは、以下の皆様です。改めまして、日本国まで、ようこそお越し下さいました。

〔ロシア側議長〕
エレーナ・ボリセンコ(ロシア連邦前司法副大臣、ガスプロム銀行副会長)

〔ロシア側創立メンバー〕
アンドレイ・ゴルレンコ(弁護士、ロシア仲裁裁判所代表役員)
ヴァシーリー・ルドミノ(弁護士、ALRUD法律事務所シニアパートナー)

〔ご来賓等〕
アレクサンドル・コノヴァロフ様(ロシア連邦司法大臣)
M.A.セルゲーエフ様(在東京ロシア大使館総領事)

第2回カウンシル・ミーティングでは、最初、川村明日本側議長から歓迎のご挨拶がされた後、エレーナ・ボリセンコロシア側議長からもご挨拶を頂きました。双方の自己紹介の後、今後の当協会の活動内容の一つとして、両国のロースクール生や若い法律家・研究者等の交換留学やインターンシップについて、具体的な提案がロシア側から示され、今後、日本国のロースクールを含めて検討を継続することになりました。

 

第2回カウンシル・ミーティングの様子(左側中央が川村明議長)
ロシア側参席者(中央:コノヴァロフ大臣、右:ボリセンコ・ロシア側議長、左:ルドミノ弁護士、最左:セルゲーエフ在日ロシア大使館総領事)
日本側参席者(左から中野由紀子、小川晶露、川村明、長友隆典、堀合辰夫(何れも敬称略))
日露のロースクール・若手法律家交流の具体的提案を行うルドミノ弁護士

 

その後、サンクトぺテルブルクの国際リーガルフォーラムについての説明や、当協会ジャパン・アーム(日本側)で立ち上げた日本側ウェブサイト(本サイト)とロシア側ウェブサイトの紹介がありました。併せて、ジャパン・アーム(日本側)ではロシア法務研究会を立ち上げたことを紹介し、将来は、ロシア法学会にまで発展させたい旨の報告がなされました。

サンクトペテルブルク国際リーガルフォーラムの紹介
ロシア側ウェブサイトについて紹介するゴルレンコ・ロシア仲裁裁判所代表

第2回カウンシル・ミーティングの最後には、川村明日本側議長から、コノヴァロフ司法大臣とボリセンコ・ロシア側議長に、それぞれ記念品(安藤七宝焼)が贈呈されました。

歓迎レセプションの開催

第2回カウンシル・ミーティングが終了した後には、日本側メンバーによる歓迎レセプションが開催されました。

第2回カウンシル・ミーティング終了後の歓迎レセプションの様子(司会:長友隆典弁護士)
ロシア側創立メンバー(左からルドミノ弁護士、ボリセンコ議長)と日本側創立メンバー(右から佐藤史人教授、田中幹夫弁護士)の歓談の様子

歓迎レセプションでは、コノヴァロフ司法大臣から川村議長に対し記念品(ロシアの非常に古い法典)(※)が贈呈されました。

 

 

古文字で書かれたロシアの非常に古い法典とのことです。

(※)この法典は、1497年の法令集「スジェーブニク」(Судебник)といわれるものであり、集権的なモスクワ国家の形成期にモスクワ大公イヴァン3世によって定められたものであり、民事法、相続法、刑事法、裁判手続法・裁判所構成法(貴族裁判所、地方裁判所、大公への上訴など)などが規制対象になっています。封建的分散状況を解消し、ロシア国家の集権化とロシア全体に及ぶ法の創出に、重要な役割を果たした法令集になります。

 

ソビエト時代から日露友好に尽力して来られた堀合辰夫弁護士(右)、在日ロシア大使館セルゲーエフ総領事(中央やや左)、当協会事務次長の中野由紀子弁護士
最後は川村明議長と事務局でロシア側の皆様をお見送りいたしました。

⇒翌日の日弁連訪問等の様子は、「2017年12月13日の記事」をご覧ください。

※今回の司法大臣の訪日は、1泊2日という大変お忙しいスケジュールではありましたが、当協会において、各ミーティングやロジ周りをアレンジさせて頂きました。法務省・外務省・在京ロシア大使館の皆さまの並々ならむご尽力とご協力に、心より感謝申し上げます。(文責:小川)

 

 

 

 

 

 

2017年12月12日①

アレクサンドル・コノヴァロフ・ロシア連邦司法大臣が来日されました。

2017年12月12日、ロシア連邦のアレクサンドル・コノヴァロ司法大臣が日本にお越しになられました。
既に2017年5月16日の記事でもご紹介させていただいておりますが、日露法律家協会(”当協会”)は、同日、ロシア連邦サンクトペテルブルク都市で開催された国際リーガルフォーラム後援の下、「グランドホテルヨーロッパ」内にて日露法律家協会の設立総会が開催され、川村明(日本側)議長とエレーナ・ボリセンコ(ロシア側)議長が共同署名することにより当協会の設立が承認宣言されました。

コノヴァロフ司法大臣には、この設立総会にお立ち合い頂きました。

 

12月12日午前11時50分、成田空港に到着された大臣は、大使館のお車ですぐ、国際仲裁シンポジウム(ベルサール六本木コンファレンスセンター)に向かわれれました。同シンポジウムで、上川陽子法務大臣と共に国際仲裁に関する基調講演を行いました。

《国際仲裁シンポジウムで基調講演を行うコノヴァロフ司法大臣》

 

その後、コノヴァロフ司法大臣は、法務省に向かわれ、同12日午後2時30分からの上川陽子司法大臣と約1時間にわたり会談されました。国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)における政治的宣言の取り纏めに向けた協力と、国際仲裁活性化に向けた施策に関する意見交換と司法分野における今後の日露関係の強化を確認されたとのことです。

日露両大臣のバイ会合の模様(上川陽子法務大臣の公式ツイッターサイトより)①
日露両大臣のバイ会合の模様(上川陽子法務大臣の公式ツイッターサイトより)②

 

上川陽子法務大臣との会談を終えた後、コノヴァロフ司法大臣は、当協会の第2回カウンシル・ミーティングに向かわれました。
⇒詳しくは、2017年12月12日②の記事にてご紹介しておりますので、ご参照ください。

 

※今回の司法大臣の訪日は、1泊2日という大変お忙しいスケジュールではありましたが、当協会において、各ミーティングやロジ周りをアレンジさせて頂きました。法務省・外務省・在京ロシア大使館の皆さまの並々ならむご尽力とご協力に、心より感謝申し上げます。(文責:小川)

2017年7月28日

第1回ロシア法務研究会が開催されました

平成29年7月28日  日露法律家協会(ジャパン・アーム)として初めてロシア法務研究会が開催されました。現在、日本国には『ロシア法学会』や『ロシア法研究会』等もありませんので、ロシア法務に志を有する実務家・研究者による記念すべき第1回目の研究会となりました。

第1回研究会のテーマは、ロシア連邦最高裁判所(ВЕРХОВНЫЙ СУД РОССИЙСКОЙ ФЕДЕРАЦИИ) № 303-ЭС16-15807事件決定(以下「本決定」といいます。具体的内容は下記参照。)を素材に、ロシア連邦共和国における外国判決の承認執行(приведении в исполнение)手続とその法的根拠について検討しました。

本決定は、2つの点で、日本企業にとって極めて重要な意義を有しています。①一つ目は、日本国裁判所の判決を、ロシア国裁判所が承認して強制執行を認めている点、②そして、二つ目は、ロシア国裁判所の判決を、日本国裁判所が承認して強制執行を認める根拠となり得るからです。

外国裁判所の判決を日本国内で強制執行するためには、外国判決の承認執行手続を経る必要があります(民事訴訟法118条)。従来、ロシア国裁判所の判決は、日本国では承認執行できないであろうと理解されてきました。その理由は、民事訴訟法118条4号が要件とする相互保証(=お互いに相手国判決の承認執行を認めていること)を充たさない、即ち、相互主義を認める根拠として、日本の判決の承認執行を認めたロシア裁判所の判決の前例がないのではないか、と考えられてきたからです。

しかし、もし、ロシア最高裁が日本国裁判所の判決の承認執行を認めたならば、上記118条4号の要件も充たし、今後、ロシア国裁判所の判決を日本国内で執行することを認める根拠となり得ます。

他方で、本研究会では、③本決定が日本国判決の承認執行を認めるべきとする根拠が、ロシア連邦が「欧州人権条約」(人権と基本的自由の保護のための条約)の締約国であり、同規約6条は判決執行の実効性も含めた問題を裁判所に訴える権利を保障していると決示した点(=”Российская Федерация является участником международного договора – Конвенции о защите прав человека и основных свобод 1950 года, статья 6 которой гарантирует участникам судебных разбирательств право на суд,”)を、同条約に加盟しない日本国の判決に適用するのは違和感がある、④他方で、ロシア連邦憲法第15条4項には、”Общепризнанные принципы и нормы международного права и международные договоры Российской Федерации являются составной частью ее правовой системы. ”と規定されており、国際法上普遍的な原理やロシア国が締結した条約は、ロシア国内の法的システムの枢要な部分になっていることが謳われており、欧州人権条約等は憲法15条4項との関連でよく登場する概念であること、⑤「相互主義」を外国判決を承認執行する要件とするのはあくまで日本国側の考えであり、ロシア国は、ロシア商事仲裁法においても「相互主義」を明言した規定は見当たらないこと、⑥判決に関する本決定の前にも、オランダ国やイギリス国の判決を、当該国とは条約等がないにも拘わらず、国際法上の儀礼(”международной вежливост”)を根拠にロシア国内で承認執行を認めている、等の非常に参考になる意見も出されました。(文責:小川)

 

【本決定文の内容】

 ВЕРХОВНЫЙ СУД РОССИЙСКОЙ ФЕДЕРАЦИИ № 303-ЭС16-15807 ОПРЕД ЕЛ ЕНИЕ

г. Москва

30.01.2017

ОПРЕД ЕЛ ЕНИЕ

Судья Верховного Суда Российской Федерации Павлова Н.В., изучив кассационную жалобу общества с ограниченной ответственностью научно-производственная фирма «Тинар» (Сахалинская обл., г. Южно-Сахалинск) на определение Арбитражного суда Сахалинской области от 08.06.2016 по делу №А59-954/2016, постановление Арбитражного суда Дальневосточного округа от 22.08.2016 по тому же делу по заявлению акционерного общества «Co, LTD» (Япония, Хоккайдо) о признании и приведении в исполнение решения Отделения в городе Вакканае окружного (местного) суда Асахикавы (Япония) от 17.10.2013 по делу № 15(ВА)2012 о взыскании с общества с ограниченной ответственностью научно-производственная фирма «Тинар» (далее – заявитель) задолженности в размере 407 633 906 японских иен и неустойки в размере 6 процентов с просроченной суммы в 407 633 906 японских иен за каждый год просрочки до полного расчета, а также судебных расходов,
определением Арбитражного суда Сахалинской области от 08.06.2016, оставленным без изменения постановлением Арбитражного суда Дальневосточного округа от 22.08.2016, требования акционерного общества «MARUGO FUKUYAMA SUISAN., Co, LTD» удовлетворены. В кассационной жалобе заявитель ссылается на нарушение судами норм материального и процессуального права, указывает на применение судами норм права, не подлежащих применению при рассмотрении настоящего дела. Согласно положениям части 7 статьи 291.6 Арбитражного процессуального кодекса Российской Федерации (далее – Кодекс) кассационная жалоба подлежит передаче для рассмотрения в судебном заседании Судебной коллегии Верховного Суда Российской Федерации, если изложенные в ней доводы подтверждают наличие существенных нарушений норм материального права и (или) норм процессуального права, повлиявших на исход дела, и являются достаточным основанием для пересмотра оспариваемых судебных актов в кассационном порядке. Оснований для пересмотра принятых по настоящему делу судебных актов в судебном заседании Судебной коллегии по экономическим спорам Верховного Суда Российской Федерации не установлено. Согласно части 1 статьи 241 Кодекса решения судов иностранных государств, принятые ими по спорам и иным делам, возникающим при осуществлении предпринимательской и иной экономической деятельности (иностранные суды), решения третейских судов и международных коммерческих арбитражей, принятые ими на территориях иностранных государств по спорам и иным делам, возникающим при осуществлении предпринимательской и иной экономической деятельности (иностранные арбитражные решения), признаются и приводятся в исполнение в Российской Федерации арбитражными судами, если признание и приведение в исполнение таких решений предусмотрено международным договором Российской Федерации и федеральным законом. Российская Федерация является участником международного договора – Конвенции о защите прав человека и основных свобод 1950 года, статья 6 которой гарантирует участникам судебных разбирательств право на суд, в том числе на эффективное исполнение судебных решений (решение Европейского суда по правам человека «Петр Королев против Российской Федерации» от 21.10.2010 № 38112/04). Неверное толкование судами норм Конвенции Организации Объединённых Наций о признании и приведении в исполнение иностранных арбитражных решений (Заключена в г. Нью-Йорке в 1958 г.) и упоминание её в тексте судебных актов не привели к судебной ошибке, а следовательно – к существенному нарушению прав заявителя (статья 291.11 Кодекса), соответственно, отсутствуют основания для передачи заявления на рассмотрение в порядке кассационного производства Судебной коллегией Верховного Суда Российской Федерации. Рассматривая заявление по настоящему делу, суды руководствовались нормами арбитражного процессуального закона, регламентирующими в Российской Федерации признание и приведение в исполнение решений иностранных государственных судов по экономическим спорам. При рассмотрении дела арбитражный суд в судебном заседании устанавливает наличие или отсутствие оснований для признания и приведения в исполнение решения иностранного суда и иностранного арбитражного решения, предусмотренных частью 1 статьи 244 Арбитражного процессуального кодекса Российской Федерации, путем исследования представленных в арбитражный суд доказательств обоснования заявленных требований и возражений.
Такие основания применительно к решению иностранного государственного суда судами при рассмотрении настоящего дела не установлены. Довод заявителя о несоразмерном характере судебных расходов является необоснованным и беспредметным, поскольку решение государственного суда Японии подлежит признанию и принудительному исполнению в Российской Федерации только в части сумм, которые в нем указаны. Суммы судебных расходов в данном решении не определены. При таких обстоятельствах доводы заявителя не могут служить основанием для передачи заявления на рассмотрение в порядке кассационного производства Судебной коллегией Верховного Суда Российской Федерации. Руководствуясь статьями 291.6, 291.8 Арбитражного процессуального кодекса Российской Федерации, судья

ОПРЕДЕЛИЛ:
в передаче кассационной жалобы для рассмотрения в судебном заседании Судебной коллегии по экономическим спорам Верховного Суда Российской Федерации отказать.

Судья Верховного Суда Российской Федерации

Н.В. Павлова

 

2017年9月19日

ロシア弁護士(ローエイシア東京本大会参加)の皆さまをお迎えしました

平成29年9月19日から同21日まで、ローエイシア東京本大会2017が開催されました。ロシアからは、ロシア連邦弁護士連合会筆頭副会長のアンドレイ・スチコフ弁護士、同連合会国際部のイリーナ・クレメンチェヴァ様、ロシア仲裁裁判所代表役員のアンドレイ・ゴルレンコ弁護士、ユジノサハリンスク都市からイヴァン・ショカレフ弁護士が参加されました。

当協会(ジャパン・アーム)におきましては、東京タワーの目下にある著名な料亭『東京芝とうふ屋うかい』にて、ロシア弁護士の皆さまを歓迎させていただきました。

ローエイシア本大会の参加者は環太平洋地域を中心とするためか、まだロシア国からの参加者は多くはありません。しかし、この度、ロシア連邦弁護士連合会からスチコフ筆頭副会長、ロシア仲裁裁判所からは同代表のゴルレンコ弁護士が来日されたことは、日露法律家の将来にとっても非常に有意義な交流となりました。

記念品を交換する川村明議長(中央)とゴルレンコ弁護士(左)とスチコフ弁護士(右)
参加者皆さまでの集合写真(「とうふ屋うかい」の素晴らしい日本庭園にて)

 

2017年5月16日~

2017 年度サンクトペテルブルグ国際リーガルフォーラムが開催される

サンクトペテルブルグで開催される国際リーガルフォーラムは、ロシア司法省と憲法裁判所が主催となって、毎年5月に開催されています。このフォーラムは、2011年から始まり決して歴史は長くありませんが、本年度も77ヵ国から3700人が参加し、文字どおり世界最大級の法律家国際会議の一つとなっています。

ロシア連邦は、3年前(2014年)にロシア弁護士制度の創生年(1864年)から150周年を迎えました。このリーガルフォーラムには、アメリカ合衆国、ドイツ、フランス、イングランド&ウェールズ、香港等、各国の弁護士会の現役の会長・副会長等が出席し、日弁連 からも前副会長 が参加しました。昨今の国際政治情勢にも拘わらず、各国弁護士会の役員がロシアという地で一同に会するというのは、有意なことと思われます。

日露法律家協会においてもディスカッション・セッションを担当し、川村明議長がモデレータとなって、当協会の長友隆典会員や早川吉尚会員(立教大学教授)がスピーカーをつとめました。

Дискуссионная сессия “И восходит солнце” – оценка новых возможностей в условиях роста японских инвестиций”

http://spblegalforum.tassphoto.com/album/43

《モデレータをつとめる川村明議長『今、太陽が昇る、日露法律家の関係を象徴するようだ・・』の言葉から始まる。》
《セッションの模様~長友隆典会員(右)》
《オブザーバーの皆さまの様子①》
《オブザーバーの皆さまの様子②》

 

 

 

2017年5月16日  日露法律家協会の設立総会が開催されました(サンクトペテルブルク)

2017年5月16日、ロシア連邦サンクトペテルブルク都市で開催された国際リーガルフォーラム後援の下、「グランドホテルヨーロッパ」内にて日露法律家協会の設立総会が開催され、川村明(日本側)議長とエレーナ・ボリシェンコ(ロシア側)議長が共同署名することにより当協会の設立が承認宣言されました。
また、来賓としてご臨席くださいましたアレクサンドル・コノヴァロフ様(ロシア連邦司法大臣)福島正則様(在サンクトペテルブルグ日本国総領事)には、つつしんで御礼申し上げます。

《設立総会の模様①》
《設立総会の模様②》
《協会の活動内容を提案するルドミノ氏》
《来賓としてご挨拶されるコノヴァロフ司法大臣》
《設立宣言書に署名する川村明議長》

 

《設立宣言書に署名するボリシェンコ議長》
《共同署名を行い設立を宣言する両議長》
《記念品を贈呈する川村明議長とコノヴァロフ司法大臣》