2019年11月1日

アレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣とのラウンド・ミーティング(円卓会議)が開催されました。

前日、開催されたカンファレンス「日露学生の模擬国際仲裁」に引き続き、翌日(11月1日)朝、ユジノサハリンスクに到着されたアレクサンドル・コノブァロフ司法大臣が、関係者と一緒にラウンド・ミーティング(円卓会議)を開催されました。

《翌日(11月1日)に開催された大臣のラウンド・ミーティング(円卓会議)の様子》

〔参加者:敬称略〕
Alexander Konovalov(ロシア連邦司法大臣)、
Andrey Gorlenko(ロシア仲裁センター代表)、
Anna Kiseleva(同センター・ウラジオストック事務次長)、
Oleg Fedorov(サハリン国立大学法学部学長)、
Denis Borodin(同大学科学発展部学長)、
セルゲイ・ポノマレフ(弁護士、元検事正、ロシア地理学会サハリン州支部長)、
Makisim Belyanin(ユジノサハリンスク弁護士会会長)、
久野和博(在ユジノサハリンスク日本総領事)、
川村明(弁護士、日本仲裁人協会会長、日露法律家協会議長(理事長))、
小川晶露(弁護士、同協会事務局長)、
柴田正義(名古屋大学大学院法学研究科ロシア法専攻)、
竹内大樹(神戸大学大学院法学研究科ロシア法専攻)、
ロシア学生4名(サハリン国立大学法学部生)、
その他、サハリン国立大学の教授数名、
(以上合計15名程度)

《モスクワから6時間の時差を超えて到着し、直ちに円卓会議を主催される大臣》

 ①まず、大臣からご挨拶があり、今回のカンファレンスの主催者、共催者、そして、日本からの参加者に対する謝辞がありました。
 ②次に、アンドレイ・ゴーレンコ・ロシア仲裁代表から前日カンファレンスの報告と、日露学生と関係者、特に、日本側では当協会議長の川村明弁護士の取り組みに対する評価と謝意が述べられた。
 ③川村明弁護士から、今回の催事が大成功であったこと、日露学生ともに素晴らしかったこと、協会の人的資源は将来を担う若い世代にも広がっていること、ロシア極東と北海道に仲裁調停の紛争解決制度が発展する日が来ることを確信したこと、等のお話がありました。

 

《極東地域における国際仲裁の重要性を発言される川村明共同議長》
《円卓会議の全体の模様》

 ④その後、大臣から日露学生に対するヒアリングがありました。
 日本の学生からは、準備が大変だったが大変勉強になったこと、国際商事仲裁の重要性を改めて実感できたこと、将来、ロシア語で国際仲裁に取り組む実務も携わりたいこと等が述べられました。
 他方、ロシアの学生からは、日本チームは入念に準備し、ロシア語力も高かったこと、自分達も大変勉強になったこと、貴重な機会を与えて頂いたこと、また同様のイベントがあれば是非参加してみたいこと、等が述べられた。

 そして、大臣からは、各種のロシアや世界の判例や実務について、どのように情報を収集して準備したのかという質問がありました。
 ※大臣は、双方の法分野の発展のためは、日露の法情報がどのようなリソースから獲得されているのか、関心を持たれているご様子でした。
 
 それに対して、日本学生からは、インターネットの活用が有益であるが、特にロシア法に関する資料(論文、判例)を収集することの難しさについて言及がありました。そして、相互に有益な情報を共有するためには、日本およびロシア双方の法的資料と人的交流をますます促進する必要があること、法分野でお互いにロシア語・日本語を理解する研究者や実務家がもっと多く登場すべきであること等の回答がありました。

 ⑤以上を踏まえた上で、大臣から、以下のとおり総括がありました。
 ・日本国とロシア極東は地域的に近接している。今回のような催事は、今後も人的交流の発展のため継続してきたい。
 ・極東地域は政治的、民族的、経済的に異なる諸国が関係し合っている。そのような複雑な地域で、商事事件を中心に適切な紛争解決インフラを築くことは、地域の発展にとって非常に重要なことである。
 ・日露双方が情報や資料を交換できることは非常に有意なことと思料される。人的交流、その中でも特に、法律家による人的交流の広がりは、今後も非常に重要な課題と思料されるので、引き続き、今回のような活動を後押ししていきたい。

 その後、当協会を代表して、川村明弁護士から大臣に対し、記念品を贈呈させて頂きました。

《大臣と記念品の交換をされる川村明弁護士・日本仲裁人協会理事長・日露法律家協会共同議長》

 以上のとおり、アレクサンドル・コノブァロフ司法大臣と関係者によるラウンド・ミーティング(円卓会議)が開催されましたので、ご報告いたします。この模様は、ロシア司法省の公式ウェブサイトにも掲載しれています。https://minjust.ru/mobile/ru/novosti/av-konovalov-prinyal-uchastie-v-kruglom-stole-po-podvedeniyu-itogov-konferencii?fbclid=IwAR3zBbyx8WWCvWx-KnpQeZpKnFst3VR8Ol-V4Iw4kmBt4bCg73q9Q5-EDzI

 末筆になりますが、以下、関係者の皆様に深く御礼申し上げます。
 今回のユジノサハリンスクでのカンファレンスは、北海道とユジノサハリンスクの日露相互の弁護士による長年にわたる友好と交流という財産の上に成り立ったものです。交流に尽力する北海道からの長友隆典弁護士(当協会事務次長、長友国際法律事務所)と、サハリン現地でフルアテンドして下さったイワン・ショカレェフ・ロシア国弁護士におかれましては誠に有り難うございました。

《20年以上にわたる北海道弁護士会とサハリン弁護士会の友好関係に尽力される長友隆典弁護士(右)とイワン・ショカレェフ弁護士(左)》

 また、模擬仲裁における日本側の仲裁人として仲裁人役を引き受け、すべてロシア語で行われる主張反論と仲裁手続に対応するという難役をこなされた中野由紀子弁護士(同事務次長)におかれましても、お見事でした。そして、誠に有り難うございました。
 そして何よりも、今回の催事において最初から最後までリーダーシップを発揮し、日露の学生に温かく接して下さり、そして、日本側として胸を張れるような今般の貢献と成果に導いて下さった川村明先生には、つつしんで御礼申し上げます。誠に有り難うございました。(文責小川)

(以下、会議終了後の様子です。)

《円卓会議後の模様:極東地域における日露交流の重要性をお話される川村明弁護士》
《ロシア企業代理人役をつとめたロシア学生と握手する川村明弁護士》
《最後に日露学生の集合写真~素晴らしい模擬国際仲裁でした》

(以 上)

 

2019年10月31日

カンファレンス「日本とロシアの模擬国際商事仲裁」がユジノサハリンスクで開催されました

令和元年10月31日、ロシア・ユジノサハリンスクのサハリン国立大学において、カンファレンス『日本とロシアの国際商事仲裁』が開催されました。

このイベントは、ロシア側はサハリン国立大学(Сахалинский государственный университет)(http://sakhgu.ru/)、ロシア仲裁センター(https://centerarbitr.ru/about/text/)、ロシア連邦司法省、サハリン弁護士会の4団体が協力して開催したものですが、日本側は当協会(日露法律家協会)がカウンターパートをつとめさせて頂きました。また、日本側からの参加者(大学院生・指導引率者・仲裁人役等)は、近時、日本政府の「国際仲裁の活性化に向けた基盤整備」政策を実現するための事業の一つとして、2018 年5 月にわが国初の国際仲裁・ADR 専用審問施設として開設された日本国際紛争解決センター(JIDRC)(http://idrc.jp/)から補助を受けて、正式に派遣されました。

《ユジノサハリンスクのサハリン国立大学の様子》
《カンファレンス会場の入口の様子》

 会場には、上記4団体を中心に、大学教授、学生、ロシア弁護士、その他、合計約150名が参加したほか、ロシア側メディや日本側のメディア(NHK放送局)等も取材に来ていました。各メディア等からのリリース内容は、以下URLにありますので、ご参照ください。

NHK放送局-『日ロの学生 経済交流進む中 契約トラブルテーマに議論交わす

サハリン地元メディア-『В Южно-Сахалинске прошла конференция “Международный коммерческий арбитраж в Японии и России”』

なお、翌日の円卓会議はロシア連邦司法省にも掲載されています―『А.В. Коновалов принял участие в круглом столе по подведению итогов конференции «Международный коммерческий арбитраж в России и Японии: национальный опыт и перспективы развития»

 カンファレンスの進行と内容は、以下のとおりになりますので、ご報告申し上げます。

第1.第1部

1.登壇者から挨拶

 (登壇者:敬称略)
アンドレイ・ゴルレンコ(Andrey Gorlenko) ロシア仲裁センター代表
アレグ・フェドロフ(Oleg Fedorov) サハリン国立大学法学部学長
マキシム・ベリヤニン(Makisim Belyanin) サハリン弁護士会会長
川村明 弁護士、日本仲裁人協会会長、日露法律家協会議長(理事長)
久野和博 在ユジノサハリンスク日本総領事

《敬称略:左から順番にアンドレイ・ゴルレンコ(Andrey Gorlenko)ロシア仲裁センター代表、アレグ・フェドロフ(Oleg Fedorov)サハリン国立大学法学部学長、マキシム・ベリヤニン(Makisim Belyanin)サハリン弁護士会会長、川村明(弁護士)日本仲裁人協会会長・日露法律家協会議長(理事長)、久野和博在ユジノサハリンスク日本総領事》
《川村明(弁護士)日本仲裁人協会理事長・日露法律家協会共同議長からのご挨拶》

2.基調講演―ロシア国際商事仲裁の概略と近時の改正:ゴーレンコ代表から、国際商事仲裁についての講演

(以下は、講演に使用されたスライドの概略のみ)
 ・ニューヨーク条約の枠組み
 ・近時のロシアの仲裁法の改正①
 ・近時のロシアの仲裁法の改正②
 ・仲裁手続の進行
 ・仲裁判断の執行
 ・ロシア仲裁センターについて
 ・ロシア仲裁センターでの取扱件数とデータ報告

 

第2.学生模擬仲裁

 第1部に引き続きまして、第2部では、このカンファレンスの最大のイベントである日本とロシアの学生による模擬国際商事仲裁が開催されました。

 日本とロシアの学生がすべてロシア語で模擬国際仲裁を行うことは、ロシア東西に関わらず史上初めてのことであり、歴史的な催事だったと思われます。

1.参加者〔以下、敬称略〕

①日本企業側―申立人代理人2名
 柴田正義(名古屋大学大学院法学研究科ロシア法)
 竹内大樹(神戸大学大学院法学研究科ロシア法)

②ロシア企業側―相手方代理人3名

③仲裁人役
 アンドレイ・ゴーレンコ(ロシア仲裁センター代表)
 中野由紀子(弁護士、半蔵門法律事務所、日露法律家協会事務次長)
  
セルゲイ・ポノマレフ(弁護士、元検事正、ロシア地理学会サハリン州支部長)

 

2.仲裁事件の内容

 日本企業とロシア企業の間で、ウニ取引に関する契約が締結されたが、ロシア企業から輸入されたウニが新鮮ではないため契約を解除すると日本企業が主張して提訴した事案。

 論点としては、①仲裁条項の準拠法規定がない場合にどう解釈するか。②解除に関する紛争まで仲裁条項が想定していたといえるか、③仲裁人が日本企業側との間で過去に一定の関わりがあった場合に忌避事由とできるか、以上の3つの論点であり、仲裁条項や手続を中心とした論点で構成されました。

3.双方の主張など

 日本側チーム、ロシア側チームは共に、それぞれ、自分達の主張を説明するためのプレゼンテーション資料を作成して本番に臨みました。

 当事者の論理構成の中には、Contra Proferentemや忌避事由に関するIBA Guidelineのいわゆるオレンジ・リストが主張され、また、ロシア連邦憲法との関わりなどの予想外の反論も登場して、難易度は高かったと思います。

 しかし、日本の学生2人は日本企業の代理人としてすべてロシア語で堂々と主張を展開し、ロシア学生3人もロシア企業代理人としてこれに反論し、さらに、仲裁人や当事者間でも質疑が交わされ、聴衆だけでなく取材に訪れたメディアからも撮影される等、会場は大いに盛り上がりました。
 なお、右陪席仲裁人は、当協会事務次長の中野由紀子弁護士がつとめました(下記写真を参照)。

《左側は神戸大学大学院の竹内大樹さん、右側は名古屋大学大学院の柴田正義さん》
《ロシア側の学生たちの様子》
《右陪席仲裁人をつとめた中野由紀子弁護士。流暢なロシア語で学生との質疑応答を行いました。》

 最後に3名の仲裁人から本日の模擬仲裁の講評と総括がなされましたが、いずれも、学生の努力と取組みを労うものであり、第2部の模擬国際仲裁は、当初の想定を遥かに上回る、大成功となりました。

 日本企業の代理人役をつとめて下さった柴田正義さん、竹内大樹さん、本当に有り難うございました。

《NHK放送局から取材を受ける名古屋大学大学院(ロシア法専攻)の柴田正義さん》
《模擬仲裁終了後にロシア側学生の健闘を称えると共にお土産品を渡たす川村明弁護士》

 そして、本日のカンファレンスの総括とフィードバックは、翌日(11月1日)のアレクサンドル・コノヴァロフ大臣とのラウンド・ミーティングで行われました。そちらの記事も、何卒、ご参照ください。(文責小川)

 

 

2019年7月12日

第13回ロシア法研究会が開催されました。

 今回のロシア法研究会のテーマは:『ロシアをめぐる制裁の現状と法的課題~対抗措置法(2018年連邦法127号)も含めて』になります。講師は、モスクワの法律事務所でロシア法務に従事された大沼真先生(長島・大野・常松法律事務所)をお迎えいたしました。大沼真先生から、以下のとおりご講義をいただきましたので、ご報告申し上げます。

《米国の対ロ制裁措置について深い知見と経験を有する大沼真弁護士の研究会発表》

1.総説
 2014年3月、ロシアによるクリミア併合を契機に、アメリカ合衆国とEU諸国が足並みをそろえてロシアに対する経済制裁を発動し、今後もさらに、制裁の拡大強化が見込まれると云われます。

 殊に、アメリカ合衆国は、2018年8月に「アメリカ敵対者に対する制裁措置法(Countering America’s Adversaries Through Sanctions Act)、以下CAATSA)」を成立等させて、イラン、北朝鮮等に加えて、ロシアに対する経済制裁を強化・拡充したことは、近時、著名なニュースとなっています。そして、JETRO調査によれば、これら経済制裁により、在ロシア日系企業の約67%が影響を受けている、と回答しているとのことです。(2018年10月03日発表ジェトロ資料より)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/10/68d2a64e718bcd9f.html

 ここで、まず、アメリカ合衆国の経済制裁の概要を、整理しておきましょう。
アメリカ合衆国の経済制裁には、大きく分けて、①国を対象とした包括的(Comprehensive)な経済制裁(対象国:イラン、キューバ、北朝鮮等)、②人(個人や企業)を対象とした経済制裁、③特定のセクター(インコファインナンス、エネルギー、防衛、石油採掘プロジェクト等)を対象とした経済制裁、④特定の地域(クリミア等)を対象とした経済制裁、以上の4つに整理されると云われます。
 そして、対ロ制裁は、上記の②③④のハイブリッド型だと云われます。

2.SDNリスト
 SDNとは、「特別指定国民」(Special Designated Nationals and blocked Persons)の略称であり、アメリカ財務省外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control(以下OFAC)が指定します。SDIに指定されると①SDI被指定者との取引が禁止される、②SDI被指定者のアメリカ国内の資産が凍結される、③SDI被指定者はアメリカ国内に入国できない、等の制裁措置を受けることになります。
 これらは、米国人が遵守しなければならない義務となりますが、ここには、”米国法人“、”米国籍保有者”、”米国居住者“が規制対象となりますので、SDNは、ロシアだけではなく、世界各国の人、例えば、日本人の暴力団等もリストに入っていたりします。米国財務省ウェブサイトでは、SDI被指定者がリストとして公開されています。
https://www.treasury.gov/resource-center/sanctions/SDN-List/Pages/default.aspx

上記からしますと、規制対象者が米国居住者も含まれるため、例えば、米国に拠点を有する日系企業も直接の規制対象となることにご留意いただく必要があります。また、上記リスト被指定者だけでなく、当該被指定者による実質的に支配が及ぶ法人(株式の過半数を保有する法人)なども含まれるとされています(いわゆる「過半数ルール」)。

 このSDIリストは、OFACにより随時更新されています。日系企業の取引の相手方がこれに指定されますと、例えば、①国際決済に利用されるUSドルなどが、日本の銀行からロシアの銀行に送金をする際、仲介銀行であるアメリカ系金融機関で送金に協力してくれない(送金リスク)、②日系企業の役員の一部がアメリカ人である場合、同社内の取締役会での議事や決議への関与に難しい問題がでてくる(決裁リスク)、③仮に、途中でSDIリストに追加指定された場合に契約の解除をどうするか、契約書上の事前の制裁条項をどのように記載するか、④上記の過半数ルールに関して、ロシアの場合、会社の所有関係が良く分からない、見えにくい、複雑である、等の実務的な問題が発生することが指摘されます。

 さらに、SDI規制に対しては、一定の例外ないし経過措置もある General License制度も規定されます。General Licenseとは、SDNと指定される前に、既に取引を開始してしまっている場合は、そのメンテナンス(継続)の範囲ではGeneral Licenseが認められ、制裁の対象から除外されるという規定です。しかし、除外は決して永遠ではなく、6ヵ月基準など、それ以降に更新できるかどうかという、また別の問題が発生したりします。

3.セクター別の規制
 2018年8月に成立した前述のCAATSAにより、①インコファインナンス、②エネルギー、③防衛、④石油採掘プロジェクトの4つのセクターに対して規制が設けられ、上記のSDIとは異なる別のリストであるSSI(Sectoral Sanction’s Identification)に指定されると、上記4つのセクターにおいては、資金調達や決済期限等に対する取引制限があります。
 例えば、上記①②③では、Directive 1(銀行):満期14日を超える新規debt取引・equity取引、Directive 2(エネルギー):満期60日を超える新規debt取引、Directive 3(防衛):満期30日を超える新規debt取引等が禁止されますし、他方、上記④の石油採掘プロジェクトでは、お金の遣り取りだけではなく、プロジェクトへの関与、協力自体が禁止されます。
 なお、このセクター別の規制にも、前記SDNと同様、50%ルールが適用されます。

4.「地域」(=クリミア)を対象とした規制
 以上の外、対ロシア経済制裁では、「地域」=クリミアの「地域」に着目した制限が設けられており、SDNやSSIのリストへの掲載の有無を問わず、クリミアという地域における取引、投資、売買等の一切が行為が禁止されています。
https://www.treasury.gov/resource-center/sanctions/Programs/Pages/ukraine.aspx
 このクリミアを対象とした規制に関しては、注目すべきロシア商事裁判例もありますので、後ほどご紹介いたします。

5.非アメリカ人を対象とした規制
 以上が、すべてアメリカ人(正確には、”米国法人“、”米国籍保有者”、”米国居住者“の全てを含む)を対象とした規制になります。アメリカ人がこれに違反すると、1000万ドルをこえる制裁金を課せられることも珍しくありません。https://www.treasury.gov/resource-center/sanctions/CivPen/Pages/civpen-index2.aspx
 他方、アメリカの経済措置法の一つの特徴として、上記に該当しない非アメリカ人に対しても、次の要件に該当する場合には、制裁の二次的対象者となることに注意を要します(CAATSA228条等)。
①相手が制裁の対象になっているか。
②重要な取引(significant transaction)か。
③幇助(facilitation)に該当するか。
 このうち上記③は、資金を提供、保証を提供、技術供与等、かなり範囲が広いとされます。また、上記②は、取引の態様、頻度、累積回数、マネジメントの認識等を総合考慮して判断するとされますので、かなり、ケースバイケースで判断される。
 非アメリカ人を対象とした規制は、日系企業の実務にとって、非常に重要な課題となっていますが、これまでのところ、ロシア関係でペナルティを課せられたのは、中国企業がロシアから戦闘機を購入した際、OFACにより、この中国企業に対して、輸出ライセンスの取消、外国為替取引禁止、アメリカ国内の資産凍結等の制裁が課せられた1件だけと云われています(ロシア関係以外では他にもあります)。

6.EUの対ロシア規制
 EUにも、基本的にはアメリカと同様がありますが、上記5のような二次的な制裁はない、とされます。一般的に、アメリカの規制の方が対象が広く、二次的制裁もあるので、アメリカの規制をチェックすれば、EUの規制もほぼ捕捉できると云われます。
ただし、SDIリストへの掲載の有無自体が違っていますので、この点は注意を要します。

7.ロシアの対抗法
 ロシアでは、これらアメリカ合衆国・EUによる一連の経済制裁に対して、2018年5月「対抗措置法」(2018年連邦法127号)を成立させました(以下「対抗法」)。
 この対抗法の成立によって、ロシアにとって非友好国、その市民、その設立された法人、その直接間接の支配下にある法人に対して、輸入・輸出、その他、ロシア大統領が裁量で決定する制裁を課すことができることが規定されました。
しかしながら、その内容はページ数にして3~4ページ程度のボリュームしかなく、対象とされる上記「非友好国・・・」も、ロシアにとって非友好的な行動をとった国、ロシア市民に対して経済的、政治的制裁を課した国等とされますが、その判断は、最終的には、ロシア大統領による広い裁量にゆだねられており、その適用範囲は明確ではありません。
 現時点で、対抗法が発動された例はウクライナに対してだけであり、それ以外の前例は確認されておりません。そのため、今後さらに、アメリカ・EUを差し置いて、日系企業が優先的に適用される可能性も高くないと理解されています。
 ただし、日系企業が制裁の対象にならないとしても、日系企業が、ヨーロッパから部材の調達をしている場合には、調達元が制裁を受けると、部材の調達が止まってしまう、という可能性はあります。
 もう1点、上記と同時期に、刑法の改正法案がロシア国会に提出されました。しかし、刑法改正は、現在も議会で止まったままとなっています。
上記改正刑法では、ロシアに対する経済制裁の導入を促進した者には、ロシア国内で刑事罰を受ける場合があります。これは、仮に立法化されると、外国企業にとっては非常に大きな問題となります。昨今の企業は、当然、ロシア国内のみならず、アメリカでもヨーロッパでも経済活動を展開していますので、アメリカやEUの経済制裁に従う行為をロシア国内で何かをした場合には、会社ではなく、個人として刑事処罰を受けてしまう、というのです。そのようなことでは、外国企業の経済活動を委縮されるのではないか、という反発があって、現在、ロシア議会では審議が止まっています。

8.制裁(対応)条項
 さて、ロシア経済制裁に対する実務的な対応策としては、制裁(対応)条項(”Sanction Clause”)と云われる条項を挿入することがあります。主たる目的としては、例えば、ロシア企業と取引していたが、突然、SSIやSDNに追加されるといった状況が起きた場合には、その会社との取引は続けられなくなるので、契約を解消したり、損害補償を制限ないし免責する条項を設けておくというものです。
 しかし、このSanction Clauseは、当事者や取引形態によって、条項内容をどうするか相当に高度な判断が必要となりますので、できればロシア法務の専門家に相談される等された方が宜しいでしょう。以下、2件の事例をご紹介いたします。

①シーメンス事件1、シーメンス事件2
 シーメンス社のロシア子会社がロステック関連会社と、発電機(タービン)を、ロシア国のタマン半島(Таманский полуостров)の発電所に納入する契約を締結したところ、同半島ではなく、クリミア半島に納入されてしまったため、上記ロシア子会社が、EU経済制裁規定を根拠に上記契約の無効と同発電機の返還を求めた事例で、モスクワ商事裁判所は、ロシア企業(=上記ロシア子会社)自ら欧米の制裁規定により契約条項の無効を主張することは、ロシアの公共の秩序(общественный порядок)やロシア国家の主権(суверенитет)に反するとして、シーメンス社側の主張を退けました。
※上記案件は、EUの経済制裁規定に該当するかどうかまでは判断されておりませんので、ご留意をお願いいたします。

②Ministry of Defense v Zvezdochka, Keleanz Medical v VTC
 アメリカ・EUのメーカーから、ロシアの流通業者をとおして、ロシア国内の買主に製品を販売するという契約で、流通業者が製品を供給しなかったところ、ロシア国内の買主が同流通業者を訴えたという事例で、ロシアの流通業者は、「製造元が経済制裁規定を理由に供給してくれないため、自らも、買主に製品を供給できないという不可抗力である」と反論しました。これに対し、モスクワ商事裁判所は、上記の不可抗力の主張を認めて、買主側の訴えを排除しました。

上記①②の各裁判例から、以下の各点が理解されます。
㋐ロシア企業が、自らが欧米の経済制裁を理由に履行しない場合には、不可抗力の主張を認めない。
㋑他方、ロシア企業が、契約の履行が国外的事情(経済制裁)で契約を履行ができない場合には、不可抗力を認める場合がある。
㋒(上記㋐に関して)契約書に正面から「制裁条項」を盛り込むことは、かえって上記㋐のリスクが発生する。
㋓(上記㋑に関して)ロシア民事法上、不可抗力には予見可能性がないことが要求されるが、そうすると、対ロシア制裁が開始して4~5年が経過した現在においても、予見可能性がなかったと言えるかどうかは別問題。

 大沼先生からのご講演は、以上のとおりとなります。大沼先生におかれましては、モスクワでの法律実務に従事されたご経験から貴重なお話をお聴かせ下さいまして、誠に有り難うございました。つつしんで御礼申し上げます。また、一口に経済制裁といっても、種々の類型があり、高度なリーガル判断が必要になることも多いですので、慎重に判断するためには、欧米の経済制裁とロシア法務の両方に知見のある専門家にご相談されることをご推奨いたします。改めまして、大沼先生、誠に有り難うございました。(文責小川)

※本ウェブサイトで公開される内容は、あくまでロシア法研究会で交わされた議論の概略を報告したに過ぎません。掲載内容の正確性や事実の真実性を保証するものではございませんので、ご理解いただきたくお願い申し上げます。

 

2019年5月17日

サンクトペテルブルグLiudmila A. Yablokova 弁護士事務所訪問報告
                    ご報告 弁護士 長友隆典
                      (当協会事務次長)

このたび,SPILF (国際リーガルフォーラム)に参加するためサンクトペテルブルグを訪問することを機会に,2018年4月21日に札幌で開催された日露家族法セミナーにロシア側から出席し発表をして頂いたLiudmila Yablokova 弁護士の事務所を訪問したので以下のとおり報告します。(長友国際法律事務所 弁護士 長友隆典

日 時:2019年5月17日現地時間午前10時
場 所:Liudmila 弁護士法律事務所,St. Petersburg, 3/5 Bolshaya Morskaya Street.
出席者:日本側 小川事務局長,中野弁護士,南純弁護士,長友隆典
ロシア側 Liudmila Yablokova 弁護士,Natalya Shvechkova 弁護士,
Tatiana Slesarskaia 弁護士他1名

訪問所感:
Liudmila 弁護士は家族法分野ではロシアでも名の知れた弁護士で,4月の日露家族法セミナーでも中心的な存在として出席し,非常に役に立つ発表をして頂いた弁護士です。そのため,訪問前はどれだけ大きな事務所なのかと思っていたのですが,実際は比較的こじんまりとした事務所であり拍子抜けした感じもしました。しかしながら,事務所の場所はネフスキー通りとエルミタージュ美術館に挟まれたサンクトペテルブルグの中心に位置しており,伝統的なビルの外見とは異なりセキュリティもしっかりしたビルの中にあり,やはりそれなりの地位を築いた弁護士であろうことは容易に想像がつきました。

《上記写真は、エルミタージュ美術館のすぐ近くにあるオフィス建物内の様子。Liudmila Yablokova 弁護士の法律があります。》

部屋に入ると,Liudmila 弁護士以外に,Liudmila 弁護士事務所のパートナー弁護士であるNatalia Shvechkova 弁護士他1名の二人の弁護士も同席されていました。その後しばらくして,Liudmila 弁護士と一緒に札幌の日露家族法セミナーに参加していたTatianaSlesarskaia 弁護士も来ていただき,ロシア側は合計4名で対応をして頂きました。美味しいお茶ととても甘いロシアらしいお菓子を頂きながら,和気あいあいとした雰囲気の中で,主として取り扱い分野やロシアにおける紛争の解決方法,事務所の運営等についてお話をして頂きました。

《Liudmila Yablokova 弁護士の執務室の様子。ご訪問させて頂き、誠に有り難うございます。》

Liudmila 弁護士の事務所は家族法に特化していて,離婚問題に限らず,面会交流や養育費請求などについても積極的に取り扱っているということでした。特に,ロシアでは離婚も多いことから面会交流の申立ても多いという事でした。

また昨今では国際結婚が増えてきていることから,ハーグ条約に基づく国を跨った子の引渡しや面会交流の申立ての事件を扱うことが増えてきたということも聞きました。

《Liudmila Yablokova 弁護士は国際離婚や親権等の家族法を多く取り扱っている方です。写真は、Liudmila Yablokova 弁護士の法律事務所で、皆さま全員での記念撮影》

同席していたTatiana 弁護士も海外からの子の引き渡し請求のためにドイツに行っていたと言っていました。

このように,Liudmila 弁護士事務所では,家族法に関する問題を国内外問わず扱っており,特にLiudmila 弁護士自身がハーグ条約に基づく子の引渡等ではロシアでも第一人者として活躍されていることがわかりました。
今のところ日露法律家協会では,もっぱらロシアでの大手法律事務所との交流や大企業を相手にした仲裁などがクローズアップされがちですが,日露間も国際結婚が多いことは言うまでもなく,したがって日露間においてもハーグ条約に基づく家族法の問題も今後も必ず顕在化してくると思われるところ,Liudmila 弁護士などの家族法専門の弁護士とも交流を深めていくことは必ず有益であると考えます。

《日本からのお土産品として京都の団扇を贈呈させて頂きました。》

最後に余談ですが,Liudmila 弁護士の事務所は書類も多くなく小ぎれいにまとまっていましたので,私の方から書籍や記録はどこにあるのか尋ねましたところ,実は別の倉庫に保管してあってとても見せられたものではないとおっしゃっており,少し安心しました。(文責:弁護士 長友隆典)

                            以  上

 

2019年5月7日

第12回ロシア法研究会が開催されました。

今回のロシア法研究会のテーマは「ロシア連邦中央銀行概論」になります。講師は、サンクトペテルブルグ国立大学大学院(LL.M)を卒業され、モスクワの法律事務所で金融業務その他に従事された南純先生(弁護士法人中央総合法律事務所)をお迎えいたしました。南純先生から、以下のとおりご講義をいただきましたので、ご報告申し上げます。

1.ロシア連邦中央銀行の意義・役割等
 ロシア連邦中央銀行(Центральный банк Российской Федерации、以下「ロシア中央銀行」といいます。)は、日本でいうところの日本銀行に相当します。現在のロシア憲法75条は、ルーブル価の安定を第一の責務とする独立機関であると定めており、ルーブル紙幣・硬貨の発行権限を唯一有する機関になります。
しかしながら、ロシア中央銀行は、日本銀行に比べると相当に幅広い権限をもっており、単に通貨(ルーブル)発行権だけではなく、金融、証券、保険業務の全般を統括・監督し、日本国でいうと金融庁のような許認可権限を保有している機関になります。
 そのため、ロシア国で活動する銀行、保険会社等は、常に、ロシア中央銀行のことを意識しており、円滑な業務運営のために同銀行と適正且つ密接にかかわることが重要になります。この点、ロシア国に進出する日本の大手メガバンクや損害保険会社なども、常にロシア中央銀行を意識して活動するのが実務となっております。
 なお、1点だけですが、保険業務だけは、財務省の外郭団体である保険監督局が許認可権限を有しております。

 以下、ロシア中央銀行のウェブサイト(https://www.cbr.ru/today/)からの抜粋になります。

Статьей 75 Конституции Российской Федерации установлен особый конституционно-правовой статус Центрального банка Российской Федерации, определено его исключительное право на осуществление денежной эмиссии (часть 1) и в качестве основной функции — защита и обеспечение устойчивости рубля (часть 2). Статус, цели деятельности, функции и полномочия Банка России определяются также Федеральным законом 10 июля 2002 года № 86-ФЗ «О Центральном банке Российской Федерации (Банке России)» и другими федеральными законами.
В соответствии со статьей 3 Федерального закона «О Центральном банке Российской Федерации (Банке России)» целями деятельности Банка России являются: защита и обеспечение устойчивости рубля; развитие и укрепление банковской системы Российской Федерации; обеспечение стабильности и развитие национальной платежной системы; развитие финансового рынка Российской Федерации; обеспечение стабильности финансового рынка Российской Федерации.
Свидетельство о внесении записи в Единый государственный реестр юридических лиц в отношении Банка России
Свидетельство о постановке Банка России на учет в налоговом органе по месту нахождения на территории Российской Федерации
Согласно статье 34.1 Федерального закона «О Центральном банке Российской Федерации (Банке России)» основной целью денежно-кредитной политики Банка России является защита и обеспечение устойчивости рубля посредством поддержания ценовой стабильности. Устойчивость национальной валюты означает не фиксированный курс по отношению к другим валютам, а сохранение покупательной способности денег за счет стабильно низкой инфляции. В условиях низкой инфляции объем товаров и услуг, которые можно приобрести на одну и ту же сумму в рублях, существенно не изменяется в течение долгого времени. Это поддерживает уверенность населения и бизнеса в национальной валюте и формирует благоприятные условия для роста российской экономики.

2.ロシア中央銀行の歴史
 帝政ロシア時代には、アレクサンドル2世の命令で、民間銀行を所轄する財務省の機関としてロシア帝国国立銀行が設立されました。その後、ロシア革命により人民銀行になりましたが、内線の後にボリシェビキが勝利して(1921年)ソビエト連邦国立銀行が設立されました。
 ペレストロイカの後、ソビエト連邦が崩壊してロシア連邦になった後、現在のロシア中央銀行が設立されました。
 そして、金融機関を一つの機関が統合的に管理すべきとする世界的な潮流の中、一つ機関で管理した方が効率的・経済的であるとの考えから、2013年に「連邦金融市場庁」の機能がロシア中央銀行に移管されて、現在のロシア中央銀行となりました。

3.組織構成
 ロシア中央銀行の意思決定機関としては国家金融会議があります。ロシア銀行の総裁が最高執行機関と位置づけられ、それ補佐するのが、理事会になります。現在の総裁は、Набиуллина Эльвира Сахипзадовна氏、これに加えて理事が14名で構成されています。理事は、総裁の推薦を得てロシア下院議会で任命され、大統領が承認することになっています。

 理事会は各種政策を提案しますが、その構成は、国会議員や大統領が指名した人物が理事として選任されます(現在14名)。4半期に一度、開催されています。
 現在の総裁Набиуллина Эльвира Сахипзадовна氏が就任しており、政府に対して金融市場の基本方針・指針を提案、金融市場の発展政策の基本政策を提出、その他、ロシア経済市場も中央銀行独自に出しています。この点、ロシア政府の経済発展省が出しているものと異なったりもします。

 法律上は、ロシア銀行総裁は「唯一の執行機関」と規定され、責任能力もすべての責任はロシア中央銀行総裁が負うと書いてありますが、学者の見解としては中央銀行総裁の権威ないし強さを示したに過ぎないとの理解が一般的です。
総裁と理事会との関係はあまり明文がないため、毎回、総裁が変わると、人によって動き方も変わり、個人の裁量が大きいと言われます。

 なお、ロシア中央銀行は裁判主体にもなりますし、自ら訴訟を起こすこともあります。代理人になるのは、内部のインハウス・ロイヤーですが、日本のような庶務検事ではありません。この点、民間団体なのか、政府機関なのか、又、独立の意味をどう解釈するのか、という議論があります。

 ロシア中央銀行の各地方局、補助局には、6万9000人いるとされます。ソ連時代に当時の民間銀行を、すべて国営化しましが、それが、現在も残っていると言われます。

4.名称等
 読み方はたくさんありますが、ロシア連邦中央銀行(Центральный банк Российской Федерации)が正式名称となっております(憲法上、ホームページ)。英字表記ではCBRと記載されます。
 別名として「ロシア銀行」(банк России)がありますが(法律上、紙幣上等)、俗称としてセントラルバンク(Центробанк)なども口語や、新聞等で使用されたりします。
 また、バンク・ラッシーヤという民間銀行がありますが、こちらは別物で、一般の民間銀行となります。
 なお、日本のメガバンクに関しては、みずほ銀行が77位(700億ルーブル)、三菱UFJ銀行が83位で650億ルーブル、三井住友銀行が640億ルーブルで84位、最近SBIが80億ルーブルで210位となっています。〔banki.ru の2019年3月の総資産ランキングより〕
 日本の銀行とは異なり、ロシアの民間銀行は、倒産することも少なくないので、これらのランキングは非常に重要となっております。

5.法的地位
 株式の保有・売却は可能となっております。預金残高第1位のツベル銀行の過半数の株式を保有していますので、ツベル銀行は実質的に国営銀行ともいえます。
 ロシア銀行は利益を上げることを禁止されていませんが、利益の50%以下は連邦予算に編入されるとされています。
 ロシア中央銀行も日本でいう商人に該当しますが、判例はなく、学術的にも通説としては、利益を挙げることは禁止されないが、営利団体ではないとされます。

 憲法上、独立性が保証されていますが、他方で、ロシア中央銀行の資産は連邦政府に帰属するとされます。
 例えば、ロシア中央銀行が車をたくさん持っていますが、車の所有者が国に支払うべき徴収金を政府機関の公用車だから払う必要はないと訴訟を起こしたところ、中銀が敗訴しました(モスクワ管区連邦商事裁判所2013年8月21日判決)。車自体が政府目的に関連して使用されたとはいなかった、という具体的な事実に着目したものです。今後も、裁判所は具体的な側面に着目して、判断していくものと思料されます。

6.実務的問題
 実務的な問題として、ロシア中央銀国の職員に対する金銭の授受は賄賂にあたるのか、という点があります。公務員の収賄を取り締まる、刑法上の罪は、法的に民間企業であれば、適用外となりますが、明確な学説、判例はまだありません。
 なお、ロシア中央銀行の中で理事に該当するクラスの職員は、理事や取締役などの特別背任罪に相当する規定する罪に該当する可能性がでてきます。
宿泊・交通費(ロシアから、ちょっと日本に来てもらって、銀行の話をする等)は、理事にあたる人は刑法上の罪になる可能性ありますし、観光についても、催事の範囲であればよいが、例えば、さらに京都に行きましょう、日本の良いところを案内します、というのは金銭の接受にあたる可能性があります。
 交際費という観点では、贈呈品とか食事代などは、事案に応じて合理的範囲かどうかを判断する他ないが、1つの原則としては、企業間の贈与が3000ルーブルを超えるものが無効とされていますので(民法575条)、これが一つの目安となるでしょう。

7.まとめ
• ロシア連邦中央銀行は、日本銀行とは違い、金融行政に関して広汎な権限が与えられている。
• 最高意思決定機関は、監督機能も担う国家金融会議であるが、業務の大部分は、理事会及び下部機関により行われている。
• ロシア銀行総裁は、唯一の執行機関である。
• ロシア銀行は、政府機関と民間銀行の中間的存在であり、利益はだせるが営利団体ではない。

以上のとおり南純先生からご講義いただきました。南先生におかれましては、モスクワでの法律実務に従事されたご経験から貴重なお話をお聴かせ下さいまして、誠に有り難うございました。つつしんで御礼申し上げます。(文責小川)

※本ウェブサイトで公開される内容は、あくまでロシア法研究会で交わされた議論の概略を報告したに過ぎません。掲載内容の正確性や事実の真実性を保証するものではございませんので、ご理解いただきたくお願い申し上げます。

 

2019年5月15日

第4回カウンシル・ミーティングが開催されました。

2019年5月14日に、第9回サンクトペテルブルク・国際リーガルフォーラムが開催されました。開会レセプションの様子は、2019年5月14日②の記事『第9回サンクトペテルブルク・国際リーガルフォーラムに参加して来ました。』をご参照頂けますと幸いです。

私共、日露法律家協会(Российско-Японский Совет Юристов)は、サンクトペテルブルク・国際リーガルフォーラムの後援を得て、ロシア連邦司法大臣アレクサンドル・コノヴァロフ様のお立会いの下、ロシア側のエレーナ・ボリセンコ様、日本側の川村明弁護士が共同署名することにより、創立されました。その際に開催されましたのが、協会の第1回カウンシル・ミーティングになります。

《第1回カウンシル・ミーティングの様子ーアレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣(手前左2人目)、川村明弁護士(奥左から2人目)》

日露法律家協会(Российско-Японский Совет Юристов)は、ロシアのサンクトペテルブルクに本拠地を有し、日露双方の法律家が協力する一つの団体であることに特徴があります。
 具体的な活動目的としては、(1)日露法律家どうしの持続的な情報交換、(2)日本国とロシア国の双方の法制度の研究・研鑽、(3)両国間の裁判外紛争解決方式(国際仲裁、国際調停等)の開発・促進、(4)両国法律家による共同セミナー・研修・会議等のイベント開催、(5)学生、弁護士、他の法曹関係者の教育プログラムの促進等がありまして、これら実現のため定期的にカウンシル・ミーティングを開催し、お互いの活動や進捗の状況について話し合っております。

2019年度の第4回カウンシル・ミーティングも、同年5月に開催された第9回サンクトペテルブルク・国際リーガルフォーラムにおいて、アレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣をお迎えして、以下のとおり、日露法律家が参加して開催されました。

1.日本側出席者〔以下、敬称略〕
 川村明(日本側共同議長、世界法曹協会元会長、日本仲裁人協会理事長、アンダーソン毛利友常法律事務所)
 小川晶露(日本側事務局長、日弁連ロシア交流チーム長、あきつゆ国際特許法律事務所)
 中野由紀子(日本側事務次長、元外務省ロシア担当、半蔵門法律事務所)
 長友隆典(日本側事務次長、元農林水産省サンクトペテルブルク駐在、長友国際法律事務所)
 南純(日本側事務局、中央総合法律事務所)
 宍戸一樹(瓜生糸賀法律事務所、モスクワ支所責任者)
 大沼真(長島大野常松法律事務所)
 三浦康晴(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業(日本))
 新島由未子(山田法律事務所)
 佐藤史人(ロシア法研究者、名古屋大学大学院教授)

【ご来賓】
 飯島泰雅様(在サンクトペテルブルグ日本国総領事)

2.ロシア側出席者〔以下、敬称略〕
 エレーナ・ボリセンコ(ロシア側共同議長、ロシア連邦元副大臣、ガスプロム銀行副会長、サンクトペテルブルク国際リーガルフォーラム理事会会長)
 アントン・アレクサンドロフ(MZS&Partners、パートナー弁護士)
 マクシム・アレクセーエフ(ALRUD法律事務所、シニアパートナー弁護士)
 アンドレイ・ゴーレンコ(ロシア仲裁協会代表)
 アレクサンドル・エルメンコ(FBK Grant Thornton法律部門部長、パートナー弁護士)
 エヴゲニィ・ラシェフスキー(Egorov Puginsky Afanasiev and Partners法律事務所、国際仲裁訴訟部門長)
 セルゲイ・ベローフ(サンクトペテルブルク国立大学法学部学長)

【ご来賓】
 アレクサンドル・コノヴァロフ様(ロシア連邦司法大臣)

《カウンシル・ミーティング開始前にご挨拶される来賓の飯島泰雅在サンクトペテルブルク総領事さま(左から2人目)と皆さまにご紹介される川村明共同議長(中央)》

第4回カウンシル・ミーティングは、冒頭から、川村明(日本側)共同議長とエレーナ・ボリセンコ(ロシア側)共同議長のそれぞれが挨拶して始められました。川村議長からは第9回目のリーガル・フォーラム開催を祝福し、ボリセンコ議長からは川村議長の協力に対する感謝と、本年度はリーガル・フォーラムでお目にかかれて光栄である旨のお言葉がありました。
※僭越ながら、会議全体の司会進行は小川晶露事務局長にて務めさせて頂きました。

《会議全体の様子と川村明(日本側)共同議長からの冒頭のご挨拶》
《川村明議長の挨拶につづき、エレーナ・ボリセンコ議長からご挨拶がありました》

 その後、アンドレイ・ゴーレンコ・ロシア仲裁協会代表からご挨拶があった後、1つ目の議題である大学間交流について、佐藤史人教授(名古屋大学大学院)とセルゲイ・ベローフ教授(サンクトペテルブルク国立大学法学部学長)との間で進捗報告と今後の課題についての発表がありました。
 昨年の第3回カウンシル・ミーティング以降、徐々に日本の大学がサンクトペテルブルク国立大学で講義に来訪する等しているが、今後、継続性や財政的基盤をどのように確保するのかについて課題を共有しました。

《ロシア仲裁協会代表のアンドレイ・ゴーレンコ氏(中央)からのご挨拶》
《大学間の人的交流についての実績と今後の展望について発表される佐藤史人教授:奥左から2人目》
《サンクトペテルブルク国立大学法学部学長のベローフ教授からのご発表》

 引き続き、次の議題である日露法律事務所間における若手弁護士の人的交流について話し合われました。
 日本人の若手弁護士としてロシア側メンバーのALRUD法律事務所(モスクワ)に、1年間、研修を行った大沼真弁護士から、ロシア法律事務所における研修の意義と成果について発表があり、これに対して、受入側であるALRUD法律事務所のシニアパートナーであるマキシム・アレクセイエフ弁護士から、ロシア側として研修を受け入れることの意義等について報告がありました。

《ロシア法律事務所で1年間研修を行った大沼真弁護士》
《受入側であるロシアのALRUD法律事務所シニアパートナーのマキシム・アレクセイエフ弁護士からの報告》

 そのような中、アレクサンドル・コノヴァロフ・ロシア連邦司法大臣がご来臨されました。コノヴァロフ司法大臣におかれましては、フォーラム中の大変ご多忙の折、当協会のカウンシル・ミーティングのためお運び下さいまして、誠に有り難うございます。協会一同、つつしんで御礼申し上げます。
 コノヴァロフ司法大臣は日露の協力に深い感謝の意を述べられた後、約40分ほどミーティングにご臨席くださいまして、最後は皆様で記念品を交換して、次の公務に赴かれました。

 

《アレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣のご到着と皆さまの様子》
《約40分間にわたりお話を交わされるコノヴァロフ司法大臣(奥右側)、ボリセンコ・フォーラム理事長・ロシア側共同議長(奥左側)と川村明日本側共同議長(手前右側)》
《贈呈品の交換と皆さまの拍手の様子》

コノヴァロフ司法大臣とボリセンコ(ロシア側)共同議長には、田島硝子さまの富士山祝杯(青富士・赤富士)をお贈りさせて頂きました。

《ボリセンコ元司法副大臣・フォーラム理事長にもお贈りさせて頂きました。》
《つづいてコノヴァロフ司法大臣から、川村議長と日本側参加者に対して、ロシア伝統菓子(пряник)が全員分贈られました。 このお菓子は、モスクワの南にあるトゥーラ市の名産品です。》
《いったん休憩中の皆様の様子。写真右側は今回初参加の新島由未子弁護士》

 今回のカウンシル・ミーティングでは、日本側参加者が多くの発表を準備して臨みました。コノヴァロフ司法大臣がご退席された後も、皆さまが多くの意義あるご報告とご発表をして下さいました。
 日本側の参加者の皆様におかれましては、普段から実務でお忙しい中、大変入念にプレゼンテーション資料をご準備くださいまして、誠に有り難うございました。つつしんで御礼申し上げます。

まず、宍戸一樹弁護士が、日本の法律事務所として初めてモスクワに支所を設置したこと、そして、日露の若手弁護士の人的交流の一環として、東京のご自身の法律事務所にて若手ロシア弁護士をインターンシップとして受け入れる準備があること等をご発表されました。

《日本の法律事務所として初めてモスクワに支所を開設したこと、そして今後の展望について発表をされる宍戸一樹弁護士》
《熱心に聴き入る参加者の皆様》

つづいて、長友隆典事務次長(弁護士)から、ロシア極東地方に隣接する地方都市北海道弁護士会の立場から、サハリン交流を中心とした日露交流の意義と将来性についてご発表があり、また、北海道に限らず、地方都市の日露交流の重要性についても報告されました。ロシア側参加者からも、質問や意見が出されて有意義な意見交換となりました。

《地方都市の日露交流の重要性について発表される長友隆典事務次長(中央)》
《なぜ、日本企業はロシア投資に委縮するのかご自身の経験から知見を提供する大沼真弁護士(右から2人目)》

 そして、最後は、当協会の若手会員である南純弁護士と大沼真弁護士により、『現状において、なぜ、日本企業はロシア投資を委縮するのか?』という非常に興味深いテーマにて、お二人の対話形式で発表されました。
 大沼真弁護士も南純弁護士も、最近まで1年間にわたり、モスクワの法律事務所でロシア法務に従事していました。お二人とも、若手弁護士の立場から、その時の経験と知見をもとに、非常に興味深い発表をして下さいました。

《大沼真弁護士と対話形式で、上記テーマについて1年間ロシア法務に従事した経験を語る南純弁護士(中央)》

以上をもちまして、日露法律家協会(Российско-Японский Совет Юристов)第4回カウンシル・ミーティングも終了いたしました。改めまして、普段、日本での実務で大変ご多忙の中、本ミーティングのために、それぞれご発表を準備して下さいました佐藤史人教授、宍戸一樹弁護士、長友隆典弁護士、大沼真弁護士、南純弁護士におかれましては、誠に有り難うございました。協会一同、心より御礼申し上げます。

また、本年度も、本ミーティングの準備・設営のため、中野由紀子、長友隆典の両事務次長におかれましては、今回も、流暢なロシア語・英語を駆使して、あらゆる路地廻りを大変力強く助けて頂きました。この場をお借りして、つつしんで御礼申し上げます。

 そして、何よりも、本年度、当協会の日本側メンバーは、川村明議長の参加を得ることができました。
 川村明先生におかれましては、リーガル・アワード受賞者選考委員会に出席するため、私共より1週間も前にサンクトペテルブルクに入って候補論文を読み抜き、その後も、開会レセプション、プレナリーセッションのスピーカー、そして、本カウンシル・ミーティングにご出席くださる等、大変なご活躍とご負担であったと拝察します。本当に有り難うございました。そして、誠にお疲れ様でございました。(文責小川)

 

 

2019年5月14日②

第9回サンクトペテルブルク・国際リーガルフォーラムに参加して来ました。

本年度も、5月14日~同17日まで、サンクトペテルブルクにて国際リーガルフォーラム(以下「サンクト・フォーラム」といいます。)が開催されました。
日露法律家協会からも、川村明共同議長を筆頭に、多くの協会会員が参加して参りました。

《サンクトペテルブルク・リーガルフォーラム会場(エルミタージュ美術館前広場)》

毎年5月に開催されるサンクト・フォーラムは、ロシア連邦司法省が主催して2011年5月を第1回目として開催され、早いもので、本年度(2019年)で9回目の開催となります。
参加者数は毎年増加し、本年度は、124か国から計5040名の参加を得たとのことです。

《毎年増加するフォーラム参加者数・参加国等(フォーラムウェブサイトより:https://spblegalforum.com/ru/About_Forum)》
《リーガル・フォーラムのプログラム冊子(ロシア語版、英語版)等》
《プログラム冊子ーフォーラム組織委員会責任者でもあるアレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣からのご挨拶文》
《プログラム冊子ーフォーラム会場であるエルミタージュ美術館と旧参謀本部建物の案内図》

5月14日午前中は、サンクトペテルブルク国立大学を訪問して参りました。そのご報告は2019年5月14日①記事『サンクトペテルブルク国立大学を訪問しました。』をご参照くださいませ。

本年度のサンクト・フォーラムも、同14日午後6時から、世界的に著名なサンクトペテルブルク・フィルハーモニア劇場大ホール(Санкт-Петербургская филармония, Большой зал)にて開会レセプションが行われました。

《開会セレモニーで第9回リーガルフォーラムの開会を宣言するアレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣》
《開会レセプションでは1500人収容の大ホールが満席となっていました》

その後、第2回リーガル・アワードの授賞式典に移りました。
このリーガル・アワードは、法学研究分野における発展に寄与貢献する論文を執筆した候補者について、世界の各大学から推薦を受け、サンクトペテルブルク・リーガルフォーラムの受賞者選考委員会が最終選考した研究者1名に対して授与される賞です。選考委員会では、昨年は日露法律家協会の顧問である小島武司教授(民事訴訟法)が審査委員をつとめ、本年度も、当協会の川村明共同議長が審査委員をつとめられました。

《リーガル・アワードの受賞者選考委員会の皆様ー真ん中やや右に川村明共同議長》

本年度は、英国オックスフォード大学教授のJeremias Prassel博士が執筆した労働法に関する研究論文“People as Service”に対して授与されました。

《写真は翌15日にメドベージェフ首相から記念品を授与されるJeremias Prassel博士の様子》

その後、カルチャープログラムに移り、世界的に著名なピアノ演奏家ボリス・ベロゾフスキー氏によるラフマニノフのソナタ2番等の演奏が披露されました。

《世界的に著名なピアノ演奏家ボリス・ベレゾフスキー氏のラフマニノフ・ソナタの演奏》
《同上》
《開会レセプション終了後の皆様の様子ー左から右へ南純、佐藤史人、小川晶露、川村明、新島由未子、長友隆典(何れも敬称略)》
《ペテルブルクは緯度が高いため午後9時をまわっても明るいー写真中央は血の上の救世主教会(Спас на Крови)》

その後のカクテル・レセプションにて、中野由紀子事務次長(弁護士)も合流しました。これにて、翌15日に予定される第4回カウンシル・ミーティングの日本側の主要メンバーも揃いました。

カウンシル・ミーティングの様子は、次の記事『2019年5月15日第4回カウンシル・ミーティングが開かれました。』にてご報告いたします。

皆さま、引き続き宜しくお願いいたします(文責小川)。

 

2019年5月14日①

サンクトペテルブルク国立大学を訪問しました。

本年度も、5月14日~同17日まで、サンクトペテルブルクにて国際リーガルフォーラム(以下「サンクト・フォーラム」といいます。)が開催されましたが、日露法律家協会からも、川村明共同議長を筆頭に、多くの協会会員が参加して参りました。
毎年5月に開催されるサンクト・フォーラムは、ロシア連邦司法省が主催して2011年5月を第1回目として開催され、早いもので、本年度(2019年)で9回目の開催となります。
参加者数は毎年増加し、本年度は、124か国から計5040名の参加を得たとのことです。

《リーガルフォーラム会場(エルミタージュ美術館前広場)》

正式な開催レセプションは、2019年5月14日の午後6時からショスタコーヴィチ・アカデミック・フィルハーモニア劇場で開催されましたが、同日午前に、ロシア法の佐藤史人教授(名古屋大学)を通じて、サンクトペテルブルク国立大学法学部に招待されました。

《サンクトペテルブルク国立大学法学部前(南純弁護士(左)、佐藤史人教授(右)》

サンクトペテルブルク国立大学(Санкт-Петербургский государственный университет、略称「СПбГУ」)は、ロシア・サンクトペテルブルクにある公立の大学で、1724年、ピョートル大帝によって帝国科学アカデミー(現在のロシア科学アカデミー)として設立されたロシア最古の大学です。モスクワ国立大学と並ぶロシアの名門大学で、特に、法学教育ではモスクワ大学を凌ぐと言われており、現ロシア連邦司法大臣のアレクサンドル・コノヴァロフ様や、サンクト・リーガルフォーラムを作ったエレーナ・ボリセンコ様(ガスプロム銀行副会長、前司法副大臣)、また、ドミートリ―・メドベージェフ首相やウラディミール・プーチン大統領の出身校としても著名です。

大学内に入ると、サンクト・フォーラムに併せて、学生国際リーガルフォーラム( МЕЖДУНАРОДНЫЙ МОЛОДЁЖНЫЙ ЮРИДИЧЕСКИЙ ФОРУМ)が開催されており、その中で、日本法を勉強するロシア法学部生に対するセッションが設けられていました。(セッション名:Круглый стол “Права Японии”(円卓会議「日本法」))

《セッション開始前の訪問者記念撮影、最右は今回初参加の新島由未子 弁護士》

日本法セッションはアンナ・グリシェンコ教授とイリヤ・ワシリエフ(Илья Васильев)教授をモデレータとして、集まったロシア法学部生約25名に対し、まず、佐藤史人教授が基調講演を行なった後、当協会も日本法を紹介する講義を行いました。

《日本法セッションでまず基調講演を行なう佐藤史人教授(ロシア法)》
《日本法セッションの様子:長い歴史と伝統を感じさせる重厚感あふれる来賓室で開催されました》

引き続き、小川晶露事務局長から日本の裁判制度についての講義、長隆典事務次長から北海道を中心とした日露の弁護士間交流の紹介がありました。

《日露の弁護士間交流を北海道を中心として日本を紹介する長友隆典弁護士《右上》》
《流暢なロシア語で挨拶される南純弁護士》

その後、ペテルブルク大学の学生さんの方からも、3名の方が日本法に関する研究報告を行いました。発表内容は、①日本との比較におけるメディアの表現の自由(“Структура права на свободу слова в С редствах Массовой Информации в Японии: в сравнении с Россией”)(ロシア法学部生Алиса Кайденкоさんの研究発表)だったり、②日本のADRとしての国際調停(ロシア法学部生Яна АнтоноваさんとЕкатерина Петроваさんとの共同研究発表)だったり、③日本国憲法第9条(ロシア法学部生Анастасия Здроговаさんの研究発表)だったりと、何れも私たち日本人にとっても非常に難しいテーマばかりでしたが、それにも拘わらず、きちんと調査をして賛成・反対の意見を述べる学生さん達の能力の高さに、大変、驚かされました。

《ロシア法学部生Алиса Кайденкоさんからの研究発表「ロシア国との比較における日本国のメディアと表現の自由の構造」“Структура права на свободу слова в С редствах Массовой Информации в Японии: в сравнении с Россией”》

上記はペテルブルク大学学生さん発表の様子ですが、左から右に順番に、Яна Антоноваさん、Алиса Кайденкоさん(発表中)、Александра Медведеваさん、そして、Мария Калининаさんになります。

《ロシア法学部生Яна АнтоноваさんとЕкатерина Петроваさんからの共同研究発表「日本国のADRとして調停」》
《日本国憲法第9条についてご発表されるНастя здроговаさん》
《最後に講評を行うアンナ・グリツェンコ教授(右側)、イリヤ・ワシリエフ教授(左側)》

約1時間30分の日本法セッションも、あっという間に終わってしまい、最後は、皆さまで記念撮影を行いました。

《集合写真の様子》

その後は、同日午後に、アレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣が大学を訪問されて、学内大ホールで開催された記念式典で基調講演をされました。

《アレクサンドル・コノヴァロフ司法大臣による学内記念式典の基調講演》

サンクトぺテルブルク国立大学にも、これほど多くの学生の皆さまが日本法に興味を持って下さり、研究活動をして下さっていることに、私共、日本の法律家としても、大変感激いたしました。
当協会としましては、今後も微力ではありますが、ロシアの法学部生の皆様の研究教育活動を支援して参りたいと考えておりますので、どうぞ、宜しくお願い申し上げます。

最後になりましたが、当協会を温かく迎えて下さったサンクトペテルブルク国立大学のアンナ・グリツェンコ教授、イリヤ・ワシリエフ教授、セルゲイ・ベローフ法学部学長には心より感謝申し上げます。誠に有り難うございました(文責小川)。

 

2018年11月12日

日本対外文化協会様の第162回研究会の講師を担当させて頂きました。

  2018年11月12日、当協会の川村明議長、小川晶露事務局長、中野由紀子事務次長の3名にて東海大学の日本対外文化協会(ロシア語表記:Японская Ассоциация Культурных связей с зарубежными странами、英語表記:Japan Cultural Association)様を訪問させて頂き、『日ロ法律家協会の活動紹介と、近時、注目されるロシア連邦最高裁2017年1月30日決定』との演題にて、第162回研究会の講師を担当させて頂きました。

  日本対外文化協会(略称・対文協)は、1966年に、故松前重義博士(前東海大学総長)によって創設された大変歴史ある国際友好団体になります。現在は、ロシア科学アカデミーとの間で「学術交流協定」を結んでいる他、モスクワ大学、サンクトペテルブルク大学との交流協定も結び、研修生の交換等も行うなど、日露友好のために積極的に活動されていらっしゃいます。今回の研究会は既に162回を数えるとのことであり、参加者や講演者の皆様も、元駐ロ日本大使様、新聞社様元ロシア局長、モスクワ大学や科学アカデミーの学長や教授の先生方などが参加していらっしゃる大変著名な研究会になります。

《日本対外文化協会第162回研究会における当協会発表の様子》

  研究会では、冒頭で、当時、川村明議長が国際法曹協会(IBA)の会長をしていた頃である2011年に、ロシア連邦でサンクトペテルブルク・国際リーガルフォーラムを創立した経緯や、2017年にはアレクサンドル・コノヴァロフ・ロシア連邦司法大臣のお立会いの下、エレーナ・ボリセンコ氏(ロシア連邦前副大臣、現ガスプロム銀行副会長)と共同にて、当協会を設立した経緯等について報告されました。特に、ロシアでも、国際水準の『法の支配』を確立するために様々な努力が行われており、この『法の支配』を日露法律家で共有することが安倍総理が進める日露経済協力を推進する道であることを付言させて頂きました。

《川村明議長のスピーチの模様(右)、サポートする中野由紀子事務次長(左)、小川晶露事務局長(中央)》

  つづいて、中野由紀子事務次長からは、上記のサンクトペテルブルク国際リーガル・フォーラムについて補足させて頂き、①同フォーラムが、英米を中心とするアングロサクソン系の世界法曹協会(IBA)や旧フランス系諸国を中心とする世界弁護士連盟(UIA)と比肩するような、世界水準の法律家大会とすることを目指して創設されたと理解される設立経緯や、②世界各国の裁判官や弁護士など法律の研究者が参加したり、各国の弁護士会からも会長レベルが来ること、③同フォーラムはロシア政府が完全にバックアップして、毎年、開催される時には、内務省、外務省、法務省、連邦保安局などすべて受け入れ態勢を整えるようにとのロシア大統領令が出ること、その結果、④設立当初の2011年にはたった757人しか参加していなかったのに、2年目から2000人を超えて、2014年には3000人を超え、2017年からは4000人を突破、本年度は4500名、合計90ヵ国から参加するようになったこと等の報告がありました。
  さらに、特筆すべきは、⑤本年度からPrivate Law prize、サンクトペテルブルク国際リーガルフォーラムの私法賞という賞を創設して、これを司法分野のノーベル賞にしたいという意気込みを持っているようであること、⑥審査委員は世界各国の著名な法学者研究者などで構成されており、日本からはお二人、中央大学の名誉教授でいらっしゃいます小島武司先生、それから川村明共同議長も審査委員会のメンバーに入っていること等をご報告させて頂きました。

  引き続き、小川晶露事務局長の方から、本日の主題である、『近時、注目されるロシア連邦最高裁2017年1月30日決定』についてご報告させて頂きました。同最高裁決定の事案であるマルゴ水産事件につきましては、当協会の記念すべき第1回研究会のテーマでもありましたので、詳しくは、同研究会の報告をご参照下さいませ

  概略につきましてご報告させて頂きますと、この事案では、日本国の札幌地方裁判所稚内支部がロシア国ティナール社に対して命じた4億円余りの支払いを内容とする確定判決が、ロシア国の裁判所において、どのように取り扱われるかが注目されました。
  ロシア国の第一審(州地方)、第二審(管区控訴審)の各裁判所は、外国仲裁判断の承認・執行に関する国際条約であるいわゆるニューヨーク条約を根拠に、ロシア商事手続法第241条の要件である『国際条約』があるとして、外国(=日本国)判決のロシア国内での承認と執行を認めました。

  そして、ロシア連邦最高裁判所2017年1月30日決定においても、(上記の下級審とは異なりますが)ロシアはヨーロッパ人権条約という『国際条約』に加盟しているとして、やはり、ロシア商事手続法第241条の適用を認め、上記の稚内の裁判所が出した約4億円の支払いを命じる日本国判決について、ロシア国内での承認と執行を認めました。

《小川晶露事務局長からのロシア連邦最高裁決定のご報告》

  上記のロシア連邦最高裁決定は、①下級審(第一審、第二審)の判断において仲裁と裁判を区別しない誤りを正面から認め、これを是正したものであること、②外国判決である日本国の判決も、国際条約ないし国際礼譲等を理由に、自国での承認執行を認めたこと、以上①②の各点において、ロシア国の内外における『法の支配』の実現に寄与する重要な意義を有すると言えるでしょう。
  さらに、③ロシア国裁判所が、外国である日本国裁判所判決の承認・執行を認めたということは〔アウトバウンド〕、日本国は相互主義をとっていますので(日本国民事訴訟法118条)、今後は、ロシア国裁判所の判決に対して、日本国裁判所が日本国内での承認執行を認める可能性が出てきた点において〔インバウンド〕、非常に注目すべき最高裁決定ということが出来ます。(詳しくは、当協会の第1回研究会報告をご参照いただけますと深甚です。)

※なお、本ウェブサイトで公開される内容は、あくまでロシア法研究会で交わされた議論の概略を報告したに過ぎません。掲載内容の正確性や事実の真実性を保証するものではございませんので、ご理解いただきたくお願い申し上げます。

  当協会は、この度、日本対外文化協会さまの研究会に初めて参加させて頂きまして、研究会が長い歴史と伝統を有するものであること、そして、ロシアに関わりのある経験豊かな方が、大変多く参加されていることを知りました。
また、研究会での発表にあたり、日本対外文化協会の渡邉さま、工藤さま、田牧さま、その他、多くの皆様に大変お世話になりました。つつしんで御礼申し上げます。

  私ども日露法律家協会では、今後も、日本とロシアの法律家が互いに協力し合いながら、日露交流と国境を越えた『法の支配』の実現に努めて参りたいと存じます。今後とも引き続き、ご指導とご支援を賜りたく宜しくお願い申し上げます(文責:小川)。

 

2018年9月17日

ロシア国際仲裁所(Russian Arbitration Center)ユジノサハリンスク支所開設記念セミナー出席報告
             ご報告:
弁護士 長 友 隆 典 

2018年9月17日現地時間午後2時からで新たロシア仲裁センター(Russian Arbitration Center)ユジノサハリンスク支所(Арбитражное учреждение в Южно-Сахалинске)がロシアサハリン州ユジノサハリンスクで開設されたことを記念しまして,記念セミナーが開催されました。この記念セミナーには,日露法律家協会から川村明会長,田中幹夫弁護士及び長友隆典弁護士が出席しましたので,以下のとおり報告いたします。

2018年9月16日深夜,川村明会長及び長友がユジノサハリンスク空港に到着しました。ユジノサハリンスク空港では,ロシア仲裁センターのアンドレイ・ゴルレンコ所長(Andrey Gorlenko)とサハリン州弁護士会所属のイワン・ショカレフ弁護士(Ivan Shokarev)が出迎えに来て頂きました。当日は深夜ということもあり,そのままホテルに移動し,翌日の記念セミナーに備えました。

翌日17日は午前11時に先にユジノサハリンスクに到着していた田中弁護士と合流し,ショカレフ弁護士の事務所に所属する弁護士にユジノサハリンスク市内を案内していただき,その後,記念セミナー会場であるユジノサハリンスクの中心部にある日本総領事なども入居する「北海道センタービル」付属の会場に移動しました(下記写真、中央は長友隆典事務次長)。

《ユジノサハリンスクの『北海道センタービル』と長友隆典事務次長》

会場では既にセミナーの準備整っており,ロシア仲裁センターからはゴルレンコ所長のみでなく,ウラジオストク支部エレナ・イスマジロバ氏及びカムチャッカ支部からアンナ・キセレバ氏も応援に来ており,ロシア仲裁センターの力の入れ方が伝わりました。サハリン州の弁護士も30人ほどが参加し,小規模な弁護士会であるにも関わらず関心の高さがうかがわれました。

《アンドレイ・ゴルレンコ・ロシア仲裁協会代表(左)と当協会議長の川村明弁護士(右)》

開会冒頭のゴルレンコ所長及びサハリン弁護士会マキシム・ベリャニン会長(Maxim Belyanin)の挨拶に引き続き,来賓でもある川村明会長が日本仲裁人協会の理事長として挨拶を行いました。ゴルレンコ所長からはロシアにおける仲裁所の重要性が高まってきていること,サハリンを含む極東地域においても仲裁所はロシア国内紛争のみならず日本や周辺国との法的紛争の解決に約立つことが丁寧に説明されました。川村明会長からのご挨拶の要旨は以下のとおりです。

ロシア仲裁センターユジノサハリンスク支所の開設,おめでとうございます。
日本仲裁人協会も,今年国際紛争解決センターを大阪に,そして,国際調停センターを京都に開設しました。更に,来年度には最新の国際仲裁センターを東京に開設する準備を進めています。
今や,小さな宗谷海峡を挟んで, サハリンと日本の両岸に,新しい国際商事紛争解決センターが発足するわけです。これは歴史的な出来事だと言わなければなりません。
ロシアのプーチン大統領と日本の安倍総理がウラジオストクで会談し,極東地域の経済開発のための両国の協力関係の強化を,改めて確認しあったということであります。ロシアと日本の経済協力の発展と平和な交流を推進するためには,国境を越えた法的紛争解決のシステム,国際仲裁の整備が不可欠です。私は,ロシア仲裁センターと日本仲裁人協会が協力して,極東・アジア地域の皆様に最適の紛争解決システムを提供できるようにならなければならないと考えます。
そのためにも,私は,この機会をお借りして,競合よりも協調,孤立よりも共同を呼びかけたいと思います。
改めまして,ロシア仲裁センターユジノサハリンスク支所の開設,おめでとうございます。ボリショエ・スパシーバ!

続いて,田中弁護士から国際間の裁判における執行の問題について,長友弁護士からは北海道とサハリン経済における仲裁の重要性について基調講演が行われました。

《記念セミナーではアンドレイ・ゴーレンコ・ロシア仲裁協会代表(最右)からご挨拶があり、その後、田中幹夫弁護士(最左)からもご発表がありました》

ロシア側からもペヴゼンコ・ロマン氏(Bevzenko Roman)及びスミルノワ・エカテリーナ氏(Ekaterina Smirnova)から仲裁所の重要性等について講演があり,これらに対して,サハリン州弁護士からも活発な質問がなされ,かなり充実した本格的なセミナーとなりました。さらに,このセミナーと合わせて,ロシア仲裁センターの上部組織であるロシア現代仲裁機関とサハリン州政府の友好協定締結についての署名式も行われました。

《記念セミナーが終了した直後の様子~очень теплая и дружественная атмосфера~》

なお,このロシア仲裁センターユジノサハリンスク支部開設及びセミナーについては地元のマスメディアでも,川村明会長の写真と共に川村明会長のあいさつ等が紹介されています。ご興味がある方は以下のリンクから参照してください。
2018年9月17日 Sakhalin.info
В Южно-Сахалинске открылся офис дальневосточного отделения Российского арбитражного центра
https://sakhalin.info/news/158262
2018年9月18日 Sakhalin Media
Офис РАЦ открылся в Южно-Сахалинске
Арбитражное учреждение включает базу специалистов со всего Дальнего Востока и стран Азиатско-Тихоокеанского региона
https://sakhalinmedia.ru/news/735988/

記念セミナーも無事に終了し,その後ユジノサハリンスク市内にある日本料理店「豊原」で懇親会が開催されました。ここのオーナーである一関権路氏は北海道出身の方で,長年ユジノサハリンスクの地に根をはってレストランを営業しており,現在ではレストランだけではなく水産物の流通なども行ない,地元のロシア人とも交流が深い人物です。料理も,サハリン産の食材を使った本格的な日本料理からロシア風にアレンジされたものが提供され,参加者皆が満足した懇親会となりました。

《記念セミナーの後は、ロシア側から祝賀会にて心温かい歓迎を受けました。誠に有り難うございます。》

翌日は,サハリン時間午後12時半(日本時間午前10時半)から,インターネット中継を活用した東京とサハリンの二元的ロシア法研究会が開催されました。ロシア側からは特別参加として,ガリレンコ所長とショカレフ弁護士が参加した。宍戸弁護士による日本からの発表に引き続き,ガリレンコ氏からも昨日のセミナーやロシア仲裁制度等について発表を頂きましたが,このようにロシア法勉強会もインターネットを用いてロシア弁護士等と一緒にやることも意義があると感じた次第でした。

ロシア法研究会の後は,川村明会長と長友でショカレフ氏の事務所やサハリン州弁護士会を訪問するなどして,飛行機の時間までユジノサハリンスクを楽しみました。飛行機の出発はサハリン時間の午後9時でしたが,その時間までショカレフ弁護士が同行して頂くとともに,空港での貴賓室の手配などを行ってくれるなど快適な時間を過ごすことができました。

《ユジノサハリンスクのレーニン像の前で記念撮影:川村明議長(中央)、田中幹夫会員(左)、長友隆典事務次長(右)》

このような短期間の行程でしたが,ロシア仲裁センターが極東地域にまで支所を複数開設し,紛争解決の主体となるように働きかけていることの背景には,ロシア国内では膨大な訴訟が提起されており裁判所だけでは処理できないという事情や日本その他の周辺国との紛争解決主体として裁判所が事実上役に立たないという事情があるのではないかと思われます。一方で,ロシアに設立された仲裁所はあくまでロシア法により設立されたものですから,ロシア国内の規制や制度の枠内で運用されるものであることに注意が必要かと思います。
したがって,真に日本国内企業にとって有益な仲裁所を目指すのであれば,日本法を準拠法とした上で同様の国際仲裁所を日本国内の東京や主要都市のみではなく地方においても設立することも検討に値すると思われます。
また,北海道弁護士会連合会ではサハリン州と友好協定を締結し,20年以上も交流を深めてきましたが,これを機会に日露法律家協会の会員もサハリンの弁護士等との交流を進めるきっかけになることを願っております。

最後に,川村明会長及び田中幹夫先生にはご出席のために時間をいただいたことに謝意を表するとともに,ガリレンコ所長及びショカレフサハリン州弁護士には多大なる便宜をはかってもらったことに心からの感謝を表します(文責:長友隆典事務次長(弁護士))。